たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。


     『ウルトラマンオーブ』第9話「ニセモノのブルース」はシリーズによくある偽物回だが、オーブとニセ・オーブが対峙しない異色の偽物回となった。 


    ・脚本はシリーズ構成も務めた中野貴雄。『ギンガS』(2014)のときからずっと温めていたプロット。パロディものの監督ばかりをやっていたので、偽物回が好きで、ババリューの心情が分かり、ババリューと自分を重ね合わせて考えていた。

    ・シンが開発したナオミA I。ナオミアイコンデザインを担当したのは三ツ矢亮。『ウルトラマンエックス』(2015)に出て来たホオリンガの擬人化も描いた人物。

    画面にはSSPの収入と支出が書かれている。

    収入:
    取材協力料:156600
    バイト代:114480

    支出:
    資料費:55080
    通信費:33696
    機材費:32400
    SSP-7維持費:52920
    交通費:27864
    修繕費:35640

    収入-支出=33480円となっている。ここからシンとジェッタのギャラが出るとなると、ナオミの分はなしにして全部払ってもひとり16740円。2人がこの金額以上働いてしまうと、借金をするなりで赤字経営になってしまう。相当逼迫した状況だ。しかも事務所の家賃が書かれていないが、支出のどこに含まれているのかは不明。含まれていないとすると粉飾の可能性がある。因みに8月の出納帳と書いてあるので、時期は8月だと分かる。


    ・中野貴雄によると、脚本を書いている段階ではババリュー役はカズレーザーを想定しながら書いたそうだ。「馬場先輩」とはお笑いグループ・ロバートのネタに出てくる役柄から着想したという。因みに、衣装は「悪党の店」で実際に売っていたもの。「センスが間違っている人にしてください」という冨田監督のオーダーがあった。

    ・ガイは当初、夏風邪を引いて寝込んでいる予定だったが、プロデューサーの岡崎聖の「ガイは遠巻きに見ているんだよ」との一言で変更。結果的に上手くいったという。因みに岡崎聖はシリーズ協力としてクレジットされている。今は円谷プロを離れている。

    ・ジェッタの父は『平成セブン』でカザモリを演じた山﨑勝之。冨田卓監督が「彼もヒーローなので、語る役には適任」と言っている。

    ・ババリューの変身シーンは、ウルトラ念力とジャックの変身ポーズを足したイメージで冨田卓監督が考案した。


    ・ケルビムの角を腕で受け、フュージョンアップするシーンは『ティガ』(1996)第1話のオマージュ。冨田卓監督は『ティガ』から現場に関わってきたので、初心に還る意味も込めて演出した。間に変身バンクが入っているが、なくても良かったのではと思う。だが促販の点から考えるとこの時期はまだ変身バンクは必須だったのだろう。


    ・ババリューを演じたのは中村龍介。もともとはシン役の候補だった。
    実際に子ども好きで、撮影中もずっと子どもと遊んでいて、それがよく画面に出ているという。ババルウ星人として戦うシーンのアフレコの際、感極まって涙を流しながら声を入れたそうだ。
    『ネクサス』(2004)第22・23話で作業員役としても出ている。
    また、『鎧武外伝 仮面ライダーデューク/仮面ライダーナックル』(2015)でシュラ/仮面ライダーブラックバロン役でも出演。

    ババリューのスーツアクターは寺井大介。コスモスからギンガまでのメインウルトラマンを務め、演技力に定評があるベテランスーツアクター。


    ・脚本の中野貴雄によると、本当は泣かせる話のつもりではなかったけど、冨田卓監督の演出が良くて、試写のときに自分が泣いてしまったという。メイン監督の田口監督から「斜め上を行け」というオーダーがあった(オーブ全体として)そうだが、本当にその通りで、観れば観るほど味の出る偽物回となった。

    cf.)『ウルトラマンオーブ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6231535.html


    [参考]
    Blu-ray『ウルトラマンオーブ』©2016円谷プロ
    You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #167 in 大怪獣サロン
    https://www.youtube.com/watch?v=-z4cUsdtrKg
    https://ja.wikipedia.org/wiki/中村龍介
    『ウルトラマンオーブ 完全超全集』編:てれびくん編集部 出版:小学館
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村



     2007(平成19)年に放送された『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』は、バンダイのアーケードカードゲーム『大怪獣バトル ULTRA MONSTERS』との連動作品。ウルトラシリーズでは初のBSデジタルでの放送された作品でもある。ネット配信も行われた。

     従来のウルトラマンが怪獣や宇宙人と戦うフォーマットから逸脱し、異星での怪獣同士のバトルロワイアルが描かれた。世界観は『メビウス』(2006)の世界と繋がっており、地球では怪獣は絶滅した設定となっている。

    cf.)『ウルトラマンメビウス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6016964.html

     惑星ボリスを舞台とし、スペースミッションのエキスパート「ZAP」と怪獣使いのレイを中心に物語が展開される。メイン怪獣はゴモラで、怪獣がヒーローのような扱いとなる。因みに、レイが使う怪獣の3体目は、エレキングの他にグビラが登場する案もあった。

    cf.)ゴモラ初登場回「怪獣殿下 前篇」はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6520129.html

    cf.)ゴモラ初登場回「怪獣殿下 後篇」はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6533057.html


     エピソードごとに、最低でも3体の怪獣が登場しているが、平成シリーズで再登場した昭和シリーズの怪獣の着ぐるみの中には改造が施されているものも多く、ゴモラの頭部、サドラの目、ベムスターの体色などが、昭和シリーズで初登場したときの形状や色彩に改められている。

     撮影は本編から先に行われ、特撮は少数精鋭で低予算を目指して製作された。ロケはなく、全編にわたって東宝ビルトのスタジオ内で撮影されており、シリーズにおける最後の東宝ビルト撮影となった。

     また、『ウルトラマンティガ』(1996)以来シリーズに関わってきた円谷一夫、デザインの丸山浩、CG製作の円谷CGI-ROOM、主題歌のProject DMMといったメンバーでの最後の製作でもある。

    cf.)『ウルトラマンティガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5966349.html

     これは、赤字が嵩む特撮と同族経営の弊害により円谷プロが経営難で限界を迎え、映像コンテンツ会社「TYO」の傘下に入り、新社長・森島恒行の指導のもとで徹底的なコストカットがなされたためである。因みに、後に円谷プロの株はバンダイやフィールズに売却され、2010年にはTYOは円谷プロを完全に手放している。

     続く『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008)は主人公レイとZAPが惑星ボリスから惑星ハマーへと舞台を移し、レイオニクスと呼ばれる怪獣使い同士のバトルや、主人公レイの暴走、レイブラッド星人との決着といった要素が盛り込まれた。因みに、当初は『ウルトラセブン』(1967)に登場した地底ロボット・ユートムの惑星を舞台とする案もあったという。また、シリーズ後半で一部ロケ撮影も行われている。

    cf.)『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html

     ミニチュアで作り込まれた街並みや石膏ビルの破壊といった手作り特撮の醍醐味を廃し、グリーンバック撮影のCG主体という製作体制に批判も多く寄せられたが、経営再建が急務だったため、仕方がなかったようだ。ミニチュア特撮は本作から数年間陰を潜めることになる。

     しかしながら、数多くの怪獣同士のドリームマッチを実現した本作は、カードゲーム関連グッズのセールス好調を受け、2009(平成21)年にはシリーズの名を冠した劇場版『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』が製作されることになる。

    cf.)『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6085844.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    DVD『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』©2007円谷プロ
    『ウルトラマンが泣いている』著:円谷英明 出版:講談社現代新書
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY
    「手作り特撮 どこへ」2007.11.25.朝日新聞朝刊.p25.
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村



     2011年、円谷プロ、テレビ神奈川、千葉テレビ放送、テレビ埼玉、サンテレビジョン、名古屋テレビ放送による共同製作バラエティ番組が深夜枠で放送された。その名も『ウルトラゾーン』。

     「もしもこんなところに怪獣が現れたら…」をテーマに、パラレルな世界である「ウルトラゾーン」で様々な話が展開される、という設定。大きく分けて、コント、コメディ、本格特撮ドラマ、の3タイプに分かれる。 


     企画・全体構成を担当した酒井健作によると、『ウルトラファイト』(1970)や『アンドロメロス』(1983)といった本流から少し外れた企画性の高い作品が好きで、円谷プロでバラエティをやるならそんな作品を作りたいと思っていたという。『戦国鍋TV』(2010)を参考に、「怪獣をあまり知らない人」でも楽しめて、その上で「怪獣好きな人」には「わかる!」と言ってもらいたい、というコンセプトで会議が重ねられた。本編以外にも、短編コーナーやアイキャッチなど、怪獣を題材に多角的に楽しもうという雰囲気が感じられる。


     本格ドラマパート8本を監督したのは田口清隆。全てジャンルを変え、視聴者にとって好きな回も嫌いな回もあってもいい、という気持ちで作ったという。同期の松野拓行プロデューサーがキャスティングをし、脚本も数話担当している。予算が限られている中で、本編と特撮を同じ現場で撮ったり、学生時代に自主映画で使った技法を採用しながら、クオリティの高いドラマ作りを意識したという。


     中でも、大岡新一社長が気に入ったのが「THE LOVE」。田口監督の商業デビュー作『長髪大怪獣ゲハラ』に出演した丘みつ子を招き、ザラブ星人との「人間ドラマ」に仕上げた。この回のみ1話完結で、他の回は前後編。居酒屋で松野拓行が「宇宙人と田舎のおばあちゃんの恋物語なんてどうだろう」と切り出し、田口清隆が「面白そうだから、お前書いてみろよ」と脚本を任せたところから始まった。


    ・ザラブ星人のスーツには、岩田栄慶が入っているシーンと外島孝一が入っているシーンがある。


    ・アフレコで声を当てたシーンもあるのだが、丘みつ子の現場とアフレコの声の波形がまったく一致しているので、音響がびっくりしたというエピソードもある。丘みつ子は怪獣が大好きで、自身の陶芸作品の中にも怪獣があるとのこと。また、いつもは撮影が終わったら台本は捨ててしまうのだが、この「THE LOVE」の台本は大切に保存してあるという。役名は「池谷ミツ子」。

    ・UFO墜落シーン。飛び散る土は田口監督が自ら土を乗せたプレートを下から蹴って表現している。

    ・墓場でのザラブ。暮石がビルのようにも見える田口監督のアイデアカット。

    ・丘みつ子の絶妙のタイミングで流れる涙が凄い。さすが大女優。因みに、「今度はもうないのよ」という台詞は、脚本を書いた松野拓行が前年に祖母の危篤に立ち会ったときに実際に受けた言葉。


     また、後に『THE NEXT GENERATION パトレイバー』(2014)の田口監督回である第10話「暴走!赤いレイバー」で民宿の女将役として呼ばれている。因みに、丘みつ子は1980年代に多くの母親役を演じたことで「日本のお母さん」と呼ばれ親しまれている。


     「THE LOVE」がきっかけで、田口監督は後のウルトラシリーズ作品に監督として抜擢されるようになる。逆に言えば、「THE LOVE」がなければ近年の『エックス』(2015)、『オーブ』(2016)、『ゼット』(2020)といったウルトラシリーズの隆盛はなかったとも言える、運命的な作品。


    [参考]
    DVD『ウルトラゾーン』©2011円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラゾーン
    https://ja.wikipedia.org/wiki/丘みつ子
    You Tube 特爆!チャンネル 【田口清隆監督登場!】特撮は爆発だ! #240SP
    https://www.youtube.com/watch?v=WpYryjOU7P0
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村

    このページのトップヘ