たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    2020年02月

     2020年2月15日放送の『激レアさんを連れてきた。』に初代ウルトラマンのスーツアクター・古谷敏が登場した。

    『ウルトラマンになった男』古谷敏.著 小学館
    で既に語られた内容がほとんどで、特撮ファンにとっては余り新情報はなかったかと思うが、古谷敏のゆっくりとした優しい口調を聞くことが出来た。

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     185cmの長身で手足が長く、カメラに収めにくいことから、モデル体型でありながら俳優としてはなかなか芽が出なかった古谷敏。夢は恋愛映画の主人公。

     ある時、その体型を買われてケムール人の役に抜擢される。頭部内はモーターや電池でギッシリのため、8kg。あのゆったりとした走行フォームが好評を得た。次いでラゴン。

     成田亨はその体型に惚れ込み、ウルトラマンをデザイン。お人好しの古谷は断れずに引き受けてしまう。

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     『エデンの東』『理由なき反抗』『ジャイアンツ』で有名なアメリカの俳優ジェームズ・ディーンの腰を低くしてナイフを構える姿勢を現場で真似して構えると、「画角に収まる」と褒められる。


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     さらに、監督(おそらく飯島監督)らと相談しながら現場で考案されたのがスペシウム光線の十字ポーズ。

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     自宅の三面鏡の前で何回も何回も練習した。ポイントは左手甲の反りだという。

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     ウルトラマンの手は銀色に塗った手術用の手袋なので薄く、怪獣の硬い牙や角、宇宙人の硬い頭にチョップやパンチしても自分が痛いだけ。極力蹴り技や投げ技を多用した。

     ゴジラのスーツアクター・中島春雄が演じるネロンガが本気で殴ってきたり、覆い被さりプレスしてきたりと、大変な現場。

     にせウルトラマンをチョップした時の痛がるリアクションは素だったし、水中では目の覗き穴から水が入ってきてあわや溺死というところだった。

     ウエットスーツで締め付けられ、シンナーやゴム、汗の臭いの悪臭。そしてぞんざいに扱われ、休憩時間はこっそり外で嘔吐したという。

     そんな3Kの仕事に耐え切れず、降板を決意するが、たまたまバスに乗り合わせた小学生の会話が(ハヤタではなく)ウルトラマンへの憧れで持ち切りだったのを聞いて、心揺れる。

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     撮影所前のバス停で降りて、頭を下げてバスを見送ったという。『ウルトラマン』をやり切ったあと、その労をねぎらわれ、続く『ウルトラセブン』では俳優としてレギュラー出演。

     俳優を辞めたあとは怪獣アトラクションショーの主催会社ビンプロモーションを立ち上げるが、バブル崩壊の煽りで倒産。清掃業などのアルバイト生活を送り、円谷プロやウルトラの関係者とも連絡を断ち、一時は死亡説も囁かれた。

     しかしある時、ひし美ゆり子のブログに登場したことから再び俳優業に就き、最近では世界各国のウルトラマンイベントに招かれて講演し、引っ張りダコ状態。というのも、海外ではスーツアクターへの敬意が非常に高いからだ。

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     あの時、劣悪な環境に挫けそうになっても、子どもたちのために頑張ったからこそ今がある。諦めずに最後までやり通す。ウルトラマンも人類のために最後まで勝利を諦めなかった。古谷敏こそ、本当の意味でウルトラマンなのではないだろうか。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    cf.)『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html

    [参考]
    ABEMAテレビ『激レアさんを連れてきた。』
    https://abema.tv/
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     『ウルトラマン80』は矢的猛が中学校教師とUGM隊員を両立しながらヒーローとして戦うという先生編から始まるが、途中からパッタリと中学校が出てこなくなる。今回はその理由について。


     矢的猛が通う「桜ヶ丘中学校」は、東京都世田谷区に存在するという設定。だが実際に撮影に使われたのは保谷市(現在の西東京市)にある市立青嵐中学校という場所だった。

     平日や土曜は撮影に使用できないため、日曜や祝日に撮影が行われ、校舎内にある教室・職員室・校長室などがそのまま使われた。しかし、やはり週一の撮影ではスケジュールを消化するのが難しく、第12話「美しい転校生」を最後に、青嵐中学校でのロケは終了し、物語はUGM編へと移行することになったのだ。

     なお、「学園もの」にする案はもともとTBSからの意向であった。番組終了後、当時の円谷プロ社長の円谷皐が平均視聴率が『レオ』を下回り10.0%に終わったことをTBSに抗議したため、両者の関係が悪化し、TVシリーズ製作は一旦打ち切られてしまった。

     因みに、青嵐中学校は第48話「死神山のスピードランナー」で、青嵐ではなく「青雲中学校」として再び使われている。現在も同じ場所にあるが、2007(平成19)年4月に新校舎に建て替えられたため、当時の面影はもうない。なお、『ウルトラマンメビウス』第41話「思い出の先生」で登場する「桜ヶ丘中学校」は別の学校の校舎である。

     わずか1クールで終わってしまった先生編だが、多くの人の心に矢的猛のさわやかで元気な先生像が今も焼き付いて離れない。今後同じような設定のウルトラマンは現れないだろう(『ウルトラマンギンガ』(2013)では田舎町の小学校が舞台となっているが、教師や生徒が多数出てくる学園ものというわけではない)。

    cf.)『ウルトラマン80』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6276509.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマン80
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     2020年は『ウルトラマン80』40周年。今回はオオヤマキャップを演じた故・中山仁について。

     ウルトラマン80に変身する矢的猛のよき理解者であるUGM隊長・オオヤマ一樹役を演じた故・中山仁は1942(昭和17)年9月25日、中華民國・北京生まれ、東京都出身。早稲田大学第一政治経済学部政治学科を中退後、劇団「文学座」付属研究所で演技を学び、1965(昭和40)年に劇団「NLT」に入団すると、同年、『乱れる』(フジテレビ系)でデビューした。1968(昭和43)年に「NLT」を退団すると、作家の三島由紀夫とともに劇団「浪曼劇場」設立に参加。同年、俳優・寺田農の実妹・寺田史と結婚。その翌年には、大ヒットドラマ『サインはV』(TBS系)で、バレーボールチーム監督・牧大介を演じ、一躍人気を獲得する。

     1978(昭和53)年には、円谷プロが制作したドラマ『土曜ワイド劇場 怪奇!巨大蜘蛛の館』(テレビ朝日系)に出演。このときのことを覚えていた円谷プロの満田かずほが、のちに『ウルトラマン80』のプロデューサーとなった際、「隊員は無名でもいいから、隊長クラスには、あの人か!とわかる人を置こう」と考え、中山に出演を交渉したという。快諾した中山は「(視聴者の)子どもたちに、この作品を通して、何かを残せればと思い引き受けた」と語っている。


    その後も、映画・TV・舞台と活躍を続け、1990(平成2)年公開の映画『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』(松竹)に一の谷博士役で出演し、10年ぶりにウルトラシリーズへ復帰した。

    2019年10月12日に肺腺癌で亡くなった(享年77)。


    『80』を振り返って、こんな言葉を残している。

    「放送当時に、子どもたちから『隊長だ!』と言われたときは、嬉しかったですね。それまで、そんな経験なかったですし、変に照れ臭かったですね。今ではその方たちが、映像プロデューサーやスタッフになっていて、撮影現場で、『80』を見ていたと言われるんですよ。この作品をやっていて、本当によかったと今でも実感していますし、僕なりに何か残せたと感じてます」


    スッと背筋の通った姿勢と広い肩が印象的で、包容力を感じさせるオオヤマキャップ。ウルトラシリーズの隊長陣の中でも上品さが際立っている。ロマンスグレーという言葉がよく似合う人だった。

    cf.)『ウルトラマン80』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6276509.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    DVD『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』(1990)©松竹/セガ/東北新社/円谷映像
    https://ja.wikipedia.org/wiki/中山仁

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    2020年1月17日の朝日新聞朝刊30ページに故・上原正三の記事が掲載されているが、ミスを見つけてしまった。
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    『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」のあらすじの説明文で、

    「身寄りのない少年と町外れの廃屋で暮らしていた宇宙人が、恐怖と疑心暗鬼にとらわれた町の人々に襲われ、殺害される。」という記述だ。

    この説明だと、少年と宇宙人の両方が殺害されてしまったように捉えられてしまう。
    しかし実際には殺害されたのは宇宙人(メイツ星人)だけである。

    小さなことだが、大事なことだ。。。既に誰か他に気付いて朝日新聞社に知らせただろうか。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    2020年1月17日.朝日新聞朝刊p.30

     2020年1月20日の朝日新聞朝刊28ページ「ウルトラ怪獣 2020を憂う」の記事にこんな記述があった。

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     ウルトラマンのスーツアクター、古谷敏は、第23話「故郷は地球」でジャミラにウルトラ水流を放射したとき、泣いていたという。

     ジャミラはもとは人間。祖国に見捨てられ、宇宙を漂流しているうち、水のない惑星に辿り着き、怪獣化してしまった、という設定。地球に帰還し国際平和会議を妨害しようとする。弱点は水。ウルトラマンからウルトラ水流を浴びせられ、悶え苦しみ、泥の中を這いつくばりながら、一本でも多くの国旗を薙ぎ倒そうとする。

     そんなジャミラを葬ったウルトラマン。しかしそのマスクの中は涙で濡れていたのだ。

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     人類学者の中沢新一も同ページに、ウルトラマンたちが「くんずほぐれつしながら闘う」のが「ハグ(抱擁)しているようにさえ見えます」とコメントしており、「優しさ」や「慈悲の力」を垣間見ている。

     元来、優しい性格の古谷敏。演技の中にもこういった優しさが見て取れる。

     『ウルトラマン』のメインライター、故・金城哲夫はこう語ったという。

    「ぼくは怪獣にも人権というか、いや、獣権というか、そんなものがあると思うな」
    「よーく見てご覧なさい。ウルトラマンの顔。怪獣に話しかけていますよ。」
    「お前、やめろよ、そんな悪さやめろ。早く帰れ、山でも海でも、巣に帰れ」

    (『金城哲夫 ウルトラマン島唄』上原正三.著 筑摩書房)

     書き手の想いを知らず知らず、現場サイドも読み取り、古谷敏の優しい性格も相俟って、ウルトラマンの優しさが相乗的に作品に滲み出たのではないだろうか。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    [参考]
    2020年1月20日.朝日新聞朝刊p.28「ウルトラ怪獣 2020を憂う」「善と悪 分離できず」
    『金城哲夫 ウルトラマン島唄』上原正三.著 筑摩書房

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