たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    2020年05月


     『ウルトラマンギンガS』(2014)第12話「君に会うために」はメトロン星人が登場する千草回。脚本は林壮太郎。監督は田口清隆。

    地球侵略の斥候として送り込まれていたメトロン星人。アイドル文化に乗じてサイリウムの光に幻覚作用を仕込み、地球を侵略しやすくする計画だったが、アイドルとして活躍する千草にメトロン自身がドはまりしてしまう。。。

    ・プロットでは、海から来た獣人とアイドルとの話だったが、プロデューサーの一言で変更となり、メトロン星人が出ることになった。

    ・田口監督回ではチブル星人の眼がキョロキョロと動いたりと、かわいらしく見えるように演出されている。怪獣愛に溢れる田口監督らしい。

    ・原典は田口監督自身が大好きな『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」。最初は恐れ多くて手が付けられないと思ったが、中途半端にやったらそれこそ致命的な大火傷だと思い、割り切ってどんどんネタをぶち込んだという。光と影の魔術師とも言われた実相寺昭雄監督のアングルへのオマージュが窺える。基地内が暗いのもそのため。

    ビクトリーとインペライザーの戦闘シーンには鏡張りのビルが登場。とても綺麗で印象的なカットになっている。

    ・このドアップのメトロンも実相寺アングルを意識しているのだろう。脚本の林壮太郎によれば、千草は前作『ウルトラマンギンガ』(2013)で宇宙人には慣れっこなので、話が進めやすかったと語っている。

    ・メトロンといえばちゃぶ台。今回はサイリウムが侵略アイテム。

    ・息を止め瞬間移動して車を脱出してしまう丹葉=メトロン。この辺のアイデアも面白い。
    演じているのは劇作家・演出家のしおつかこうへい。
    今作での田口監督との縁で、映画『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』(2015)では御酒屋慎司役を演じている。

    ・夕陽も切っても切れない関係のメトロン。

    ・ゾアムルチ戦。原典の『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」ではムルチとジャックとの闘いが長回し1カットで撮影されており、今回もその手法が採用されている。工場地帯の描写や途中にある平たいタンクも再現されており、スタッフの愛が感じられる。ビクトリーがタンクの上を転がるカットでは手前にメトロンがおり、メトロンの上を転がっているようにも見えるのは遊びで狙ったためだろうか。メトロンをどかしてちゃんとタンクを見たい気もする。

    ・長回しの最後の立ち回りで石膏ビルに突っ込むメトロン。きっと何回もリハーサルをしたのだろう。
    素晴らしい長回しとなった。

    ・当初は芸人のキャッチャー中澤が千草のマネージャー役になるという話もあったが、プロデューサーの一言でその話はなくなったそうだ。見てみたかった気もする。

    田口監督は前作でも千草派だったという。それだけに千草の後日談が出来て嬉しかったことだろう。アイドルとして活躍する千草の良い表情が撮れている。

    cf.)『ウルトラマンギンガS』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6145930.html

    cf.)『ウルトラマンギンガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6129654.html

    [参考]
    DVD『ウルトラマンギンガS』©2014円谷プロ
    You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #120
    https://www.youtube.com/watch?v=rMqNGsVkYA4
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     『ウルトラマンギンガS』(2014)第8話「朝焼けの死闘」に登場するファイブキング。
    ギンガとビクトリーの連携により、左腕、次いで右腕、と破壊していくシーンがあるが、右腕(レイキュバス)の手が破壊された後の造型も凝っている。カニの身のような繊維質が何本もあり、スーツアクターの五指がしっかり入ってワサワサと動くようになっている。

    この回の監督は田口清隆。怪獣チェックの時間が他のどの監督より長いと評判で、ウルトラマンよりも怪獣たちに感情移入してしまうという田口監督。このあたりの芸の細かさも素晴らしい。

    ツインテールはエビの味がすると言われているが、レイキュバスはやはりカニの味がするのだろうか。あまり美味しそうには見えないが。


    cf.)『ウルトラマンギンガS』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6145930.html
    cf.)『ウルトラマンギンガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6129654.html

    [参考]
    You Tube 特爆!チャンネル 【田口清隆監督登場!】特撮は爆発だ! #240SP
    https://www.youtube.com/watch?v=WpYryjOU7P0&t=395s
    DVD『ウルトラマンギンガS』©2014円谷プロ
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     初代『ウルトラマン』(1966)の撮影期間中、ウルトラマンのスーツは怪獣との激しい殺陣の影響で破損・劣化が激しく、スーツが新造されている。撮影順にAタイプ、Bタイプ、Cタイプ、とそれぞれ呼ばれている。Aタイプのマスクはラテックスが塗られており、顔面に凹凸やシワがあるが、BタイプからはFRP(強化プラスチック)が使われ、綺麗な仕上がりとなっている。BタイプからCタイプに移る過程でマスクも新造されており、特徴が微妙に違うが、マスクも変えた理由については諸説ありはっきりしていない。

     最終話「さらばウルトラマン」に登場したゾフィー。これは、にせウルトラマンとして流用されていたAタイプのボディを再改造したものと、新たに作ったCタイプのマスクを組み合わせて作ったと言われている。よく見ると、トサカ部分が黒く塗られている。ウルトラマンが入った赤い光球を運ぶゾフィー人形も、トサカが黒い。また、目の位置が若干高く、覗き穴がない。企画当初の段階では「ウルトラマンの実兄」という設定だった。


     当時の学年誌などでは「ゾフィ」や「ゾフィー」、そして「ゾーフィ」と表記がバラバラであり、なんとゼットンを操っていた黒幕説も存在する。


     ゾフィースーツは後に、ボディの塗装をウルトラマン仕様に塗り替えられ、再びウルトラマンとして使われるようになる。これが俗にいう、幻のDタイプスーツである。因みに、ゾフィーの名称は劇場映画『ウルトラマンZOFFY』(1983)をきっかけに「ゾフィー」で統一されるようになったという。


    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    [参考]
    『ウルトラマン裏百科』編著:宇宙囚人207
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ゾフィー
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     初代『ウルトラマン』(1966)のデザインは、彫刻家・成田亨によるものだが、デザインが変遷していく途中、デザインの決定稿を待たずに粘土原型作成に進んでいる。粘土原型の製作を担当したのは造形家・佐々木明。武蔵美術大学卒で、成田亨の後輩にあたる。成田から口頭で指示を受け試行錯誤しながら造型した。

     そのときの製作イメージによると、ウルトラマンの眼はトンボかバッタのイメージ。さらに、顔全体はちょんまげをつけた侍のイメージだったという。

     当初、完成したスーツには、口が開閉して喋っているように見せるギミックが施されていた。しかし、マスクに塗ったラテックスが伸び縮みするうちにシワになってしまい、それを見た円谷英二が口の開閉を止めさせたという。Aタイプスーツは口が半開きになっており、頬にシワが出ているのは、その時の名残である。

     佐々木明は『ウルトラQ』(1966)の頃から美術スタッフとして製作に参加。怪獣やミニチュアセット造型などに携わっている。全てのウルトラマンの原点となるウルトラマンのマスクやウルトラセブンのマスクを造型した。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    [参考]
    You Tube CHBobcatsチャンネル ウルトラ伝説(初代マン編)Part2/4
    https://www.youtube.com/watch?v=N3CFa6LaEGA&t=20s
    https://ja.wikipedia.org/wiki/佐々木明
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     初代『ウルトラマン』(1966)の完成されたデザインはどのように成立していったのだろうか。
    当初は『科学特捜隊ベムラー(仮題)』という企画で、前作『ウルトラQ』(1966)に続く「モンスター・シリーズ」として設定されていた。科学特捜隊が窮地に陥るとヒーロー「ベムラー」が現れ、大きさ自由自在、必要に応じて空を飛ぶことも可能という万能選手。デザインは渡辺明が担当した。

     そこから、彫刻家の成田亨にバトンタッチ。
    メインライターの金城哲夫は「かつてないほど格好よく、美しい宇宙人を創ってくれ」とオーダー。

     当時のヒーローといえば、『月光仮面』(1958)に見られるようにサングラスを掛けたり、『スーパーマン』シリーズに見られるようにマントを羽織った等身大の人間、という姿が定番だった。

     はたして「美しい宇宙人」とはどんな存在か。成田亨はギリシャ哲学をヒントに、怪獣がカオス(混沌)ならヒーローはコスモス(秩序)と位置づけ、デザインを起こしていく。

     頭部に兜、顔面はダイヤカット、体表は鎧的、とした初期デザインが完成する。

     そこからどんどん要素を削ぎ落していった。
    続く企画書『科学特捜隊 レッドマン』では体全体にラインが走るデザインとなっている。

     この頃は『ウルトラマン』の名で企画書や台本も作られている。古代のギリシャ彫刻や広隆寺の弥勒菩薩に見られる微笑「アルカイックスマイル」を採り入れようとした跡が垣間見える。
    「本当に強い人間は戦うとき、かすかに笑うはず」と考えたからだ。

     そして、目の形状が現在のアーモンド型に到達する。まだ鼻梁が存在し、顔の各パーツの処理を考えあぐねている状態となる。

     造型家・佐々木明と共に粘土原型の形出し切り替え、1尺程の人形が完成。これがウルトラマンの決定デザインとなった。俗にトサカと呼ばれる部分が頭頂部から口元まで伸び、鼻梁がなくなっている。
    「肩を強調すると普通のヒーローになってしまう」という理由で筋肉の盛り上がりを強調せず、火星の模様をイメージした赤い線で流している。体色は宇宙ロケットに着想を得て銀色とした。

     また、カラータイマーは、ない。

     カラータイマーは、知らない内に後から勝手に付けられていたそうで、成田亨としては不満だったという。因みに、2021年公開予定の映画『シン・ウルトラマン』では、より成田亨デザインに近づけるべく、カラータイマーのないウルトラマンが登場する。

     また、出来上がったスーツには、ジッパーを隠す目的でトサカから繋がる背ビレが存在するが、デザイン画には背ビレの設定はない。視界を確保するために覗き穴も開けなければならず、これらも成田亨としては不満だったようだ。

    cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7747851.html

    cf.)後年描かれた『真実と正義と美の化身』はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7691964.html

     成田亨は神戸で生まれ、青森に移り1歳になる前に左手に火傷を負う。指がくっつき、曲がり、数度の手術でも治らなかった。小学校ではいじめられ、右手だけで描ける絵が救いだったという。

     東京の美術学校に進学し、絵画専攻だったが、授業に不満を感じ彫刻コースに移った。作業中、移植した皮膚から血が流れることもしばしばで、涙が流れた。

     宇宙人も怪獣も「異形」のものだが、成田亨にとっては自分自身が異形だったのかもしれない。
    東宝の撮影所で「ゴジラ」に壊されるビルを作ったアルバイトがきっかけで、特撮美術にも精通するようになる。松竹や東映を経て、円谷プロの『ウルトラQ』に出会うのだった。

     『ウルトラセブン』(1967)の途中までは、怪獣・宇宙人は基本的に成田亨がデザインし、画家・高山良策が造型した。彫刻家が絵を描き、画家が造型するという逆アンサンブルは見事に功を奏し、傑作と呼ばれる怪獣・宇宙人たちを次々と世に現出させることになる。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    cf.)『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html

    [参考]
    You Tube CHBobcatsチャンネル ウルトラ伝説(初代マン編)Part2/4
    https://www.youtube.com/watch?v=N3CFa6LaEGA&t=20s
    https://ja.wikipedia.org/wiki/成田亨
    2009年10月8日.日本経済新聞.p29.「成田亨の美しい宇宙人」
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