たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    2020年06月


     『ウルトラマン80』(1980)第12話「美しい転校生」は教師編の最終エピソード。ハカセの恋物語だ。脚本は広瀬襄。監督は深沢清澄。特撮監督は高野宏一。

    偽の恋文によって公園に誘い出されたハカセ。偶然にもそこで転校生ミリーと出会う。しかし、ミリーは地球侵略を企てるビブロス星人の一員だった。

    ・ビブロス星人ミリーを演じたのはジュディ・モーリス。声を演じたのは加藤早紀子。『ザ☆ウルトラマン』(1979)でタカシの友達役の声も演じている。

    笑顔が可愛すぎる。とくに学校で転校生として紹介され、席に座ってハカセに猫の手で合図するシーンはたまらない。この後の、ファッションたちに絡まれたミリーを救うハカセの「メダカと金魚」の台詞もいい。

    ・何者かに狙われる猛。本棚が光線で爆発!後頭部に思いっきり火花を浴びている。スタントマンではないようだ。長谷川初範も大変だっただろう。髪が焦げたのではないだろうか。

    ・塾の日曜テストをサボってデートに出掛けたハカセ。ハカセを心配して学校に訴えてきた母親に、「息子さんは正しく成長している」とハカセを認める発言をする猛。立派な教育者・ウルトラマン80を語るには外せない名シーンとなった。

    ・「地球人を愛してしまったんです」ミリーにもハカセへの恋心が芽生えていた。エンディングの回想にあるような、デートシーンがもっとたくさん撮影されていたのだろうが、カットされてしまったようだ。80を倒す宣言をしてワープするミリー。

    ・ゴラとのアクロバティックな闘い。テンポの良いカッティングによって緊張感のある戦いに仕上がっている。スーツアクター・奈良光一はあまりに激しいアクロバティックなアクションのために、撮影中に肉離れを起こしたそうだ。背中からズドンと落ちるカットもあり、非常に危険なアクションにチャレンジしていたことが窺える。

    ・アローショットとゴラの火炎攻撃。光線技の応酬も熱い。

    ・たてがみからも光線を発射するゴラ。意表を突かれ攻撃を受けてしまう80。ビハインドレーザーというそうだ。

    ・バックルビームとサクシウム光線で倒す80。

    ・ゴラのデザイン担当は山口修。コンセプトは「炎のライオン」。単純でありながら、秀逸なデザイン。泣き声はキングコングのアレンジ。

    ・ミリーはオランダに行くことになったと説明し、テープに録音したミリーの声を聴かせる猛。涙するハカセに、「これまで以上にしっかり生きるんだ」と説く。ここまで寄り添ってくれる先生はまさに理想の先生だ。

    ・実はこの回には未公開シーンが存在し、スチール写真が残っている。任務の失敗を悟ったミリーが爆発と共に果てようとするが、間一髪で猛が助け、ミリーに対し生きていくよう説得する。ミリーの行く末にも明確な希望を持たせた展開である。脚本上でも、最後はビブロス星に帰る設定になっていた。おそらく意図的にカットすることによって、美少女侵略宇宙人の話でなく、ハカセの恋物語に終始させ、ミリーの結末を視聴者が気になるよう、また、自由に想像できるよう仕向けたと思われる。

     「君は誰かを愛しているか」と主題歌で謳っているように、愛の素晴らしさを教え子に説き、周りの大人たちから毅然と擁護する、教師然とした矢的猛=80の振る舞いは当時の子どもたちの心に深く響いたに違いない。矢的猛を演じた長谷川初範も「こんな先生がいたらいいな」と思って演じていたという。

    cf.)『ウルトラマン80』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6276509.html

    [参考]
    DVD『ウルトラマン80』©1980円谷プロ
    https://seesaawiki.jp/w/ebatan/d/%A5%B4%A5%E9
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     『ウルトラマン』(1966)は大ヒットを記録するが、製作が追い付かなくなり、放送続行を断念。第39話「さらばウルトラマン」でその幕を閉じた。さて次回作は。人気を継承する形で製作が決定した『ウルトラセブン』(1967)。しかし、その道のりは困難を極めた。



     『ウルトラマン』(1966)終了後、東映製作による『キャプテンウルトラ』(1967)が半年間にわたり放送され、その間に『ウルトラセブン』(1967)の製作体制が固められていった。「敵は宇宙からの侵略者に統一する」という方向性が示された上で、新たな路線を目指すべく、試行錯誤が続いた。

     最初の企画案は「宇宙基地No.7」。続く企画案「ウルトラ警備隊」は宇宙時代に活躍する地球防衛軍隊員たちと侵略者たちとの戦いを描いたものであったが、巨大変身ヒーローは登場しないものであった。この企画案は『キャプテンウルトラ』の方に継承されていく。

     その後、企画が練り上げられ、「ウルトラアイ」となった企画では、ウルトラ警備隊に主人公の「諸星弾」という少年が加わり、「レッドマン」に変身して侵略者と闘うという内容だった。この「レッドマン」はダミータイトル。その後、金城哲夫が『快獣ブースカ』(1966)(日本テレビ)の後継作品として構想していた7人の猿人によるコメディ作品「ウルトラ・セブン」からタイトルを拝借、『ウルトラセブン』という名で正式決定した。因みに、必殺技アイ・スラッガーは「ウルトラアイ」の頃の名残り。眼(アイ)がキーポイントとされ、主人公にも眼が印象的な森次浩二(当時)が選ばれ、変身シーンも眼から変身していく演出がなされた。

     セブンのデザインは前作同様、成田亨が担当。スーツアクターの上西弘次の体型に合わせ、上半身に意匠を凝らし、下半身は極力意識させないようアッサリとしたデザインにした。

    FullSizeRender


    cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7756552.html


     企画段階から英国SF作品『サンダーバード』(1965)の影響を色濃く受けており、戦闘メカや基地の描写がより本格的となっている。また、ウルトラホークの発進シークエンスは『ウルトラQ』『ウルトラマン』で培ってきた特撮技術・美術の粋を集めた素晴らしい出来映えとなり、監修の円谷英二が絶賛したという。

     『ウルトラQ』以降の累積赤字を理由に、第3クール以降は予算の引き締めが行われ、着ぐるみや特撮セット等が節約され、着ぐるみが登場しない回も存在する。しかし脚本陣はそんな逆境の中でも奇抜なアイディアを連発し、工夫を凝らした見応えあるハードSF作品となっている。作品を覆う雰囲気としては、視聴者層を若干高く設定したのもあり、前作『ウルトラマン』に比べてやや暗め。大人が観ても十分楽しめ、現代にも通ずる深いテーマ性を抱えた回が多いことで有名である。

    cf.)セブンのデザインについてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5882978.html

    cf.)『ウルトラセブン』各話クレジットはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5889049.html

    cf.)前作『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    cf.)次作円谷作品『怪奇大作戦』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6179907.html

    cf.)次作ウルトラシリーズ『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラセブン
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     『ウルトラQ』(1966)第14話「東京氷河期」はペギラの再登場回。野長瀬三摩地監督が「自分なりのゴジラを描きたい」という想いが強く出ているエピソードだ。

     実はこの「東京氷河期」。放送が2度も延期になっている。当初は2月20日放送予定だったが、2月4日の全日空機事故で放送延期。3月13日に放送することになるものの、また3月4日の羽田惨事、続く5日のBOAC機事故が発生、また放送延期になってしまった。結局、4月3日に放送となった。

     奇しくも、この話の結末は、元ゼロ戦パイロット・沢村照男がセスナ機で特攻をしかけて解決を見るという、航空に関するものだった。因みに視聴率は36.8%をマークしたそうだ。

     ペギラの猛吹雪よろしく、あやうく埋もれる作品になるところだった。

    cf.)「東京氷河期」についてはこちら→ultra-7.blog.jp/archives/6614835.html

    cf.)『ウルトラQ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6654971.html

    [参考]
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラQ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/全日空の航空事故およびインシデント
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラQの登場怪獣
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     『帰ってきたウルトラマン』(1971)第11話「毒ガス怪獣出現」。この回は金城哲夫が脚本を書いたウルトラシリーズ最後の1本だ。

     『ウルトラQ』(1966)、『ウルトラマン』(1966)、続く『ウルトラセブン』(1967)で脚本を務めた金城哲夫。脚本家でありながらプロデューサー的業務も精力的にこなして第1期ウルトラシリーズ創出に貢献した金城哲夫は、『マイティジャック』(1968)や『怪奇大作戦』(1968)の不振を受け、1969年に円谷プロを退社し、沖縄に帰郷。沖縄芝居を書いたり、ラジオやテレビ番組の司会などをしていた。


     1971年、『帰ってきたウルトラマン』の企画が進む中、プロデューサーの満田かずほが金城にオファー。「気晴らしにもなるから」と上京を促し、1本脚本を依頼した。金城は馴染みの旅館「はなぶさ」にこもって第11話「毒ガス怪獣出現」を書き上げた。


     旧日本軍が開発した毒ガス・イエローガス。山中に廃棄されていた毒ガスを食べてしまった怪獣モグネズンが毒ガスを吐きながら暴れ回る。防衛チームMATの隊員である岸田は、自身の父がその毒ガスの開発者だったことを知る。しかも、岸田の兄はそれを知って自殺していた。岸田家の因縁を背負って重苦しい表情で憑りつかれたように怪獣に挑んでいく岸田は負傷し、倒れる。ウルトラマンも毒ガスに苦しみながら闘い、MATの助けもありやっとの思いで怪獣を倒す。

     上原正三は、この脚本にはかつての金城の伸びやかさがないという。毒ガスへの恐怖や苛立ちをそのままぶつけたような作品だった。

     毒ガスを素材にしたのには理由があった。金城が沖縄に帰郷した1969年7月、アメリカ軍が沖縄に神経ガスを貯蔵していることが露見したのだ。当時、泥沼化していたベトナム戦争で実際に使用されているとの噂もあり、大騒ぎになった。

     毒ガスの問題は過去の遺物ではない。旧日本軍が中国で捨てたり埋めたりした毒ガス兵器がもとで被害を受けた者は今もおり、裁判にもなっている。現代にも尾を引く大問題なのだ。

     スペシウム光線はガスを炎上させるために放たれ、モグネズンへのトドメにはスピンキックが使われる。怪獣を爆散させないのは毒ガスの拡散を防ぐという物語上の展開も然ることながら、毒ガス問題がカタルシスでスッキリと終われない問題であることも示唆しているのではないだろうか。

     さて、敢えて穿った見方をしてみれば、岸田隊員やウルトラマンは金城哲夫自身(実際に変身するのは郷隊員だが)。岸田の父は「オヤジ」と呼ばれ1970年に逝去した円谷英二。イエローガスは資本主義、といったところだろうか。資本主義の荒波に飲まれ、身を削るようにして作品を作り出し、疲れ果ててしまった金城は、純粋に作品を楽しんで作れなくなってしまった。「特撮の神様」と呼ばれ、失敗は許されなかった円谷英二。こう考えると、2人の天才の悲しみが連想されるような回でもあるのだ。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    DVD『帰ってきたウルトラマン』©1971円谷プロ
    『金城哲夫 ウルトラマン島唄』著:上原正三 出版:筑摩書房
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     『ウルトラマンエックス』(2015)第3話「夜を呼ぶ歌」に登場する地底女。

     エステティシャン・間伏涼子になりすまして、エステサロンを経営しているという設定。本当の間伏涼子は2年前に他界しているということが、防衛チームXioの調べで判明する。

     地底女を演じたのは佐伯日菜子。『エコエコアザラク3』(1997)での黒井ミサ役以来、監督・田口清隆が大ファンだったという。


     実はこの間伏涼子、『怪奇大作戦 セカンドファイル』(2007)第1話「ゼウスの銃爪」にも名前が出てくる。過去に殺されてしまった女子大生の名前だ。映像としてもチラッとだけ出てくる。演じたのは網師野純。 


    「夜を呼ぶ歌」「ゼウスの銃爪」どちらも脚本は中野貴雄だ。使いまわしの謎の死者の名前、「間伏涼子」。今後も中野脚本に出てくるかもしれない。。。

    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    cf.)『怪奇大作戦』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6179907.html

    [参考]
    Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
    DVD『怪奇大作戦 セカンドファイル』©2007NHK・円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/佐伯日菜子
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