たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    2020年07月

     『ウルトラQ』(1966)第5話「ペギラが来た!」はペギラの初登場回。脚本は山田正弘。監督は野長瀬三摩地。特技監督は川上景司。

    ・南極基地へ向かう極地観測船・「鷹丸」。割れた氷河の表現が素晴らしい。現代では予算等の問題でなかなかこれほどのセットは実現できないのではないか。

    ・突如黒煙が流れ吹く。これが実はペギラ。

    ・船が揺れ怪我を負ってしまう万城目。失踪した野村隊員の調査で船に乗り込んでいた。


    ・転んだ拍子に久原羊子隊員と接触。転び方がわざとらしく、故意に抱いているように見えなくもない。

    ・突然の大寒波に「予想外に早く冬が来た」という認識の乗組員一同。機材も食料も不十分で越冬はできない見立て。雪上車での輸送に切り替える案が出、「私がやります」と伊東隊員が立ち上がる。イケメンだ。

    ・ペギラの冷凍ガスの影響で4tもある雪上車が舞い上がる。伊東隊員は無事だろうか。これは当時、「超低温の状況下では無重力現象が発生する」という学説があったためのアイデアだと思われる。いわゆるトンデモ学説である。


    ・外は寒すぎ、雪上車が舞い上がる怪現象もあったため、伊東隊員の捜索は見送られる。3年前行方不明になった野村隊員も伊東隊員のような目に遭ったのではないかと推論する万城目。それに現実的な点から反論する鈴木副隊長。髭がダンディだ。声を当てているのは内海賢二。

    ・外に出ようとして断念した久原隊員の目前で、雪上車が浮かぶ。ドアの隙間から入ってきた風に無重力化の作用があるらしい。

    ・一瞬、ペギラが悪魔のように見えるシーン。この顔は子どもにはトラウマになりそうだ。


    ・瀕死の状態で還ってきた伊東隊員。「怪物だ。氷の化け物。いや動物だ。とても大きい。」と、うわ言を言う。心配そうな顔で見下ろす天田隊長を演じるのは松本克平。1995年に亡くなっている。享年90歳。

    ・久原隊員が振り返るとすぐ後ろに凄い形相の伊東隊員が。「野村だ・・・」
    伊東隊員を演じたのは伊吹徹。
    東宝俳優で、ゴジラシリーズへの出演も多い。

    ・暴れる伊東隊員を押さえつけて再び寝かせる。久原隊員が鎮静剤を打ったようだ。


    ・密かに野村隊員の捜索に出る久原隊員。

    ・雪上車で久原隊員の跡を追う一同。

    ・気を失った久原隊員と、氷漬けになって死んでいる野村隊員を発見。


    ・氷山の山影からペギラ出現!「自分なりのゴジラを目指したい」という想いだった野長瀬三摩地監督。『ゴジラ』(1954)で大戸島にゴジラが出現するシーンと似ており、オマージュだと見る人もいる。

    ・思わずあとずさりする一同。足音を立てないように後ろに下がる動作がいかにもリアル。

    ・ペギラの冷凍ガスで雪上車が舞い上がる。万城目や隊員たちも舞い上がる。よく見ると、人間が雪上車にぶつかっている。飛んでいるのはもちろん人形。


    ・氷原で意識を取り戻す万城目と久原隊員。実は野村隊員の婚約者だった久原隊員。野村隊員の傍で生きながらえていた犬の三郎が食べていた苔から、ペギラの弱点を推測する。

    ・ペギラがマイナス130度の冷凍光線を吐くことや、その際、反重力現象が起こることが判明。

    ・三郎が食べていた苔をアザラシに食べさせたら死んでしまったという。苔から採取したペギミンHを開発した久原隊員。

    久原羊子隊員を演じたのは田村奈巳。
    本作の江戸川由利子役や『ウルトラマン』の女性隊員役の候補にも名前が挙がっていた人気女優。
    『ウルトラマン』(1966)第35話「怪獣墓場」の月ロケットセンター職員役や、
    『ウルトラセブン』(1967)第26話「超兵器R1号」の前野律子博士役、そして
    『怪奇大作戦』(1968)第8話「光る通り魔」の林洋子役を演じている。


    ・ペギラの表情がいい。眼玉の裏から黒目を塗っているため、目の光の加減や角度によって、黒目が光の中に溶け、白目がちな凄みのある表情となる。牙の形状や左右非対称の鼻の孔の形、体の表面に生えている産毛なども生物らしさがあって秀逸。
    スーツアクターは清野幸弘。
    名前の由来はペンギンから。アザラシとペンギンを掛け合わせた成田亨のデザイン画に牙や角が付け足された。
    怪獣といえばゴジラのような前傾・猫背の体型を創造しがちだが、スッと背筋の通った怪獣は当時としては新鮮だった。異様な存在感を醸し出している。飛行速度はマッハ80にも達するという設定。この第5話での鳴き声は『妖星ゴラン』(1962)に登場する南極怪獣マグマのアレンジ。後の第14話では違う鳴き声になっている。

    ・観測用ロケットにペギミンHを詰め、100mまで引き付けてから発射。発狂して発射役を下ろされる隊員役を演じたのは今井和夫。第6話「育てよ!カメ」の教師役や、
    『ウルトラマン』第9話「電光石火作戦」の高原少年団団長役も演じている。

    ・見事命中し、ペギラの撃退に成功。去るときも黒煙を撒き散らしていくペギラ。

    ・東京の土を野村隊員の墓前に撒く久原隊員。

     雪景色の特撮セットが非常に豪華で、そこに降り立つペギラの造型美と凄みのある表情が印象的。ウルトラ最初期の作品なのに、映画ではなく、テレビで「南極を描く」という快挙を見事に成し遂げている。

     成田亨デザイン・高山良策造型のタッグが最初に生み出したこの傑作怪獣はその後、第14話にも登場し、続く『ウルトラマン』では耳を付けて細部が改造され、チャンドラーとして復活する。

     極限の危機的状況の中で打開策を考案し、壁を乗り越えていく。ウルトラマンがいない中、人間の力だけで怪獣を撃退し、知恵と勇気で勝利を収めた。

     ペギラは近年、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(2019)や『ウルトラマンゼット』(2020)第5話にも登場。眠たそうな目がチャームポイントで、今後も愛されていくこと間違いなしの怪獣だ。『Dr.スランプ アラレちゃん』第42話に登場したこともあるようだ。

    cf.)ペギラ2回目の登場回「東京氷河期」はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6614835.html

    cf.)『ウルトラQ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6654971.html

    cf.)ペギラ登場の『ウルトラマンゼット』第5話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6593557.html

    [参考]
    DVD『ウルトラQ』©1966円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/田村奈巳
    https://ja.wikipedia.org/wiki/伊吹徹
    https://ja.wikipedia.org/wiki/内海賢二
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラQの登場怪獣
    https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/40459.html
    https://seesaawiki.jp/w/ebatan/d/%a5%da%a5%ae%a5%e9
    怪獣グルメな狭霧の誘拐怪人 Twitter(@yukaikaijin)
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村

     7月18日(土)放送の『ウルトラマンゼット』第5話「ファースト・ジャグリング」はペギラ登場回。ヘビクラ隊長がジャグラーであることが明らかとなり、ゼッパンドンも登場。脚本は中野貴雄。監督は辻本貴則。

    ・「寒い」と「アッサム」を掛けたオヤジギャグを披露するヘビクラ隊長。アッサムティーを片手に笑顔。ジャグラーに因んでコーヒーギャグだったらより良かった。

    cf.)『ウルトラマンオーブ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6231535.html

    ・怪獣の登場シーンにこだわりを見せる辻本監督。今回は氷河が割れるカットや、黒煙がもくもくと渦を巻くカットを挿入。この黒煙カットは原典『ウルトラQ』(1966)第5話「ペギラが来た!」や第14話「東京氷河期」で登場した黒煙のオマージュ。

    ・サーモグラフィーで黒煙の中にペギラの影が確認できた後、ペギラが降りてきてさっそく街を凍らせる。出現理由は温暖化の影響だろうと劇中で説明されている。凍る噴水の横で小便小僧も凍っている。

    cf.)ペギラ初登場回『ウルトラQ』第5話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6605555.html

    cf.)ペギラ2回目の登場回『ウルトラQ』第14話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6614835.html


    ・辻本監督は車が怪獣災害に巻き込まれる様子にもこだわりがある。今回は車の内引きカットでドーナツ等が舞い、逆さまに墜落してからペギラに踏みつぶされ爆発するという散々な運命を辿った車だった。

    ・ハルキが駆ける道の影に「むつき信用金庫」のATMが。「むつき」は辻本監督の愛犬の名前だろう。
    愛犬家の辻本監督は『ウルトラマンエックス』(2015)第6話・第7話に登場するルディアンの顔をむつきに似せるようオーダーしたり、第18話に登場する宇宙化猫の名前をむつきに因んで「ムー」と名付けている。

    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    ・ウィンダムがペギラの冷凍ガスで凍ってしまう。その脇には「all78」なる店が。78円ショップだとしたら激安店だ。売っているものによるが。M78星雲に因んだのだろう。


    ・ハルキからゼットライザーを奪い、とある森林でダークゼットライザーを作るジャグラー。

    cf.)ジャグラーの由来や設定についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6077982.html

    ・保育園の内引きカット。室内の飾りつけも非常に凝っている。壁には「?-ちゃん保育園」と貼ってある。「うーちゃん保育園」または「むーちゃん保育園」だろうか。先述の宇宙化猫に因んで「むーちゃん」の方が可能性が高そうだ。

    ・ハルキが奮起し、セブンガーに搭乗、頭突きアタックをかます。


    ・セブンガーがジェット噴射の熱でウィンダムの氷を溶かす。ロボット同士の助け合い感が良い。

    ・雄々しく立つペギラの傍に、これまた辻本監督の愛犬が載った看板が。「ロイヤルモフモフ」と書いてある。何の宣伝なのかよく分からない。因みに、『THE NEXT GENERATION-パトレイバー-』(2014)の辻本監督回では愛犬と辻本監督の2ショットシーンが存在する。

    ・セブンガーの硬芯鉄拳弾。今回は時限発動式に設定され、ハルキがヨウコを助けている間に発射された。


    ・ウィンダムのコックピットからヨウコを救い出すハルキ。コックピットはウィンダムの首元にあるようだ。

    ・ペギラの冷凍ガスからハルキを守ったジャグラー。赤く光る蛇心剣がカッコいい。

    ・ゼットライザーを返してもらい、ようやくアルファエッジに変身。空中戦を繰り広げる。主観カットを交えたり、大迫力のシーンとなった。『ウルトラマンオーブ』(2016)第1話や『ウルトラマンR/B』(2018)第5話で田口監督が演出した空中戦カットとどことなく似ており、参考にしたのではないだろうか。だとしたら、作品内で監督同士が刺激し合ってより良い映像が生まれている証である。


    ・ゼスティウムメーザー。

    ・超古代の石器がなぜか光り輝き、ゼットのもとへ。ゼットランスアロー登場。

    ・かつて自分を封印した武器の出現に仰天の表情を見せるペギラ。眠たそうな表情が売りのペギラだが、瞼を完全に開いた記念すべきカット。『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(2019)の際に新造された着ぐるみ。


    ・ゼットランスファイヤー。逐一「Z」の文字にこだわる演出だが、「自己主張が強い」という声も。この傾向はウルトラマンビクトリーやウルトラマンエックスにも見られる。

    cf.)ビクトリー登場の『ウルトラマンギンガS』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6145930.html

    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    ・ペギラ大爆発!ナパーム使用のオープンカットだろう。画面の隅には「7GER」という店が。

    ・ジャグラーがあの全身黒タイツで変身。ゼッパンドン登場。メダルはゼットン・パンドン・マガオロチだった。マガオロチで闇の力を補った、ということか。ゼットはアローショットで対応。


    ・ゼスティウム光線。今回初めて地上撃ちだった。

    ・ゼッパンドンシールドで防がれてしまう。

    ・「怪獣退治の専門家」という台詞がハルキから飛び出す。『ウルトラマン』(1966)の主題歌に出てくる言葉である。歌詞は科特隊の主観で語られており、ストレイジ=科特隊とするなら、状況にマッチした台詞だ。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

     ヨウコも「これが私の仕事だから」という台詞を吐いており、プロ意識もこの回のテーマだろう。


    ・ゼットアイスアロー。商戦もあるので、主要な技3つ全てを使う展開となったのだろう。

    ・ゼットランスアローを持ったアルファエッジのあおりカット。『ウルトラマンタイガ』(2019)第18話でもトライブレードを構えたタイガのあおりカットを演出した辻本監督。スタッフが意図を汲み取って合成したらしいが、今回も見事な仕上がりとなっている。

    cf.)『ウルトラマンタイガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6253725.html

    ・カメラ目線で「面白れぇ」と呟くヘビクラ=ジャグラー。今のところ、何がしたいのかよく分からないが、ゆくゆく明らかになっていくのだろう。


     ペギラ、ジャグラー、ゼッパンドン、ゼットランスアロー、プロ意識・・・という内容盛り沢山の脚本だった。ゼットランスアローがなぜゼットに力を貸したのか、そのあたりの描写が薄いが、テンポよく進む物語と大迫力でこだわりの詰まった特撮カットのおかげでそんなに気にならないよう作られている。中野貴雄脚本のバランス感覚と辻本監督のこだわり特撮が見事に融合された結果だ。

     次回はギルバリスとジード ギャラクシーライジングが登場。待望の坂本監督回が始まる。リクがどういう絡みを見せるのか気になるところ。。。

    cf.)『ウルトラマンジード』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6238261.html

    cf.)ギルバリス登場の劇場版『ジード』前編はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5719972.html

    cf.)後編はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5768026.html

    cf.)第6話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6652705.html

    cf.)第4話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6535953.html

    [参考]
    You Tube ウルトラマン公式 ULTRAMAN OFFICIAL by TSUBURAYA PROD.チャンネル
    『ウルトラマンZ』第5話「ファースト・ジャグリング」-公式配信- "ULTRAMAN Z" Episode 5 -Official-
    https://www.youtube.com/watch?v=4eRR3rosNCg

     『ウルトラマンオーブ』(2016)に出て来た調査団・SSP。その事務所のセットの一部が公開された。

    松戸シン役を演じたねりお弘晃が自身のTwitterで写真を掲載している。

    ・SSPの表札・インターフォン・ポスト。住所は東京都東多摩市北川町1-20-1。もちろん架空の住所だ。「北川町」といえば、『ウルトラセブン』(1967)第8話「狙われた街」に出てくる町だ。その後のウルトラシリーズでもオマージュでしばしば「北川町」の名が散見されている。

    IMG_5687

    ・タイムカード。ジェッタがナンバー2、シンがナンバー3。後ろの看板は「カキサ醤油」と書いてある。昭和の雰囲気を醸し出している。汚し加減が良い。

    IMG_5688

    ・ロッカー。ナンバー1のナオミとナンバー2のジェッタの間にナンバー3のシンが挟まれている。

    IMG_5689


    どれも汚し加減が良く、美術部の力の入りようが分かる。俳優が作品世界に気持ちよく入れるように、画角の中の世界観を追究している。「カメラには映らないかもしれないが、演じている俳優の目には映る」そんな細部へのこだわり・熱意が作品を支えているのだ。

    cf.)『ウルトラマンオーブ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6231535.html

    [参考]
    ねりお弘晃Twitter(@Nerio_TW)
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村

     『牙狼〈GARO〉-GOLD STORM-翔』(2015)テレビシリーズの第1話・第2話に『ウルトラマンコスモス』(2001)でフブキ隊員役を演じた市瀬秀和が登場していた。

     ビクロというホラーの人間態。人間態での激しいアクションも披露している。
    ツンとした感じの正義感を持ったフブキ隊員とは違い、悪役としての演技が光る。


     高校生のときに映画『柳生一族の陰謀』(1978)を観て以来、時代劇を愛好するようになり、映画『大菩薩峠』(1960)に主演した市川雷蔵に憧れて俳優業を志した。時代劇復興を願い、時代劇作品にも多く出演している。

    また、声優としても活躍しており、アニメ『家庭教師ヒットマンREBORN!』(2006)で担当した獄寺隼人に愛着があり、愛犬に「はやと」と名付けたという。

    cf.)『ウルトラマンコスモス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5982670.html

    [参考]
    DVD『牙狼〈GARO〉-GOLD STORM-翔』©2015雨宮慶太/東北新社
    https://ja.wikipedia.org/wiki/市瀬秀和
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村

     『ウルトラマン』(1966)第22話「地上破壊工作」はテレスドン登場回。脚本は佐々木守。監督は実相寺昭雄。特殊技術は高野宏一。

     実は地球には地底人がおり、地上に攻撃を仕掛けてくる。当時のSF界で流行っていた「地球空洞説」がこの回のモチーフではないかとされている。

    ・パリ本部のアンヌ・モーハイム隊員を本人かどうか光線チェックするキャップ。いきなり銃を向けるので一瞬ドキッとする演出。

    ・光線チェックされたカード。「PAR-24 ANNE MORHIM」と書いてある。パリ本部の24番目の隊員ということだろうか。

    ・ロケット操縦の技術指導顧問としてハヤタがアンヌとともにパリへ行くことに。イデが「だいたいお前はあまり役立たん方だからな」と聞き捨てならない台詞を吐く。


    ・ハヤタが出発した途端、各地の電波に異常が生じる。科特隊にも電波障害を起こす装置が置かれていた。

    ・装置を分解すると数々の部品から成っていることが分かる。画面に映っているだけでも49の部品がある。

    ・ケリチウム磁力光波を出す装置だった。部品のひとつ、ゲルマタント鉱石は地下4万mの地底にしか存在しないという。
    つまんで解説するのは福山博士。演じているのは福田善之。
    第19話「悪魔はふたたび」でも福山博士として登場。
    また、『ウルトラセブン』(1967)第12話「遊星より愛をこめて」(欠番)でも福田博士として出演している。


    ・パリに行ったはずのアンヌ隊員がアンテナのついたリモコンのようなものを持って何かをしている現場を発見。追い掛けるが逃げられてしまう。

    ・現場に落ちていたのはハヤタの通信機だった。

    ・テレビセンターを張るイデ。天井模様とBGMが印象的なカット。実相寺監督の作品にはシンメトリーや幾何学模様の背景カットがしばしば登場する。


    ・現れたアンヌ隊員は地底人だった。肌色のハンペンのようなものを貼って目の退化を表現。この辺のチープさがまた何ともいえない味を醸し出している。因みにこのときの髪型はストレート気味。他のシーンではウェーブが掛かっている。

    ・地面が盛り上がるテレスドンの登場カットは圧巻。

    ・「アッハハハハハハ!」高笑いする地底人のドアップが印象的だ。


    ・ビルとビルの間の路地から見えるテレスドン。奥へと走り去る地底人。この構図も良い。

    ・合成した炎が素晴らしい。火炎が丸く巻き上がって一瞬、人魂のようになる。テレスドンのスーツアクターは鈴木邦夫。

    ・ビートルから投下されるナパームの嵐!

    ・テレスドンが見えなくなる程の爆発量。あたり一帯炎の海だ。


    ・光と影を操る実相寺監督。絵画に出てくるような構図が素晴らしい。「キャップ~!」と駆け寄ってくるイデと合流する面々のカット。この構図はちょうどキリコの『通りの神秘と憂愁』に似ている。1914年に描かれたものであり、第一次世界大戦への不安を表したものとされている。絵画に出てくる大きな影は戦争や死の暗喩だという。芸術に造詣の深かった実相寺監督なら意図的に挿入してもおかしくない。或いは意図せず自然にこの構図になっていたか。


    ・仮眠マスクで眠らされ、催眠状態に置かれ、光の明滅で操られ変身させられるハヤタ。

    ・だがしかし、変身したら普通にウルトラマンとしてテレスドンに立ち向かうのだった。投げ技炸裂。
    地底人に操られて街を壊す→科特隊の活躍で正気に返る、という展開も面白そうだが、もし提案しても周りの圧力で廃案になっただろう。


    ・ウルトラマンの前跳び蹴りが決まる。

    ・投げ技のオンパレードだ。最後は頭上に持ち上げてから投げ落とした。


    ・本物のアンヌ・モーハイム。目のインパクトが凄いが、化粧のせいか。もともと目が大きいのもあるのだろう。演じているのはアネット・ソンファーズ。結局、ハヤタは改めてパリへ行くことに。


     怪獣らしく大暴れするテレスドン。ナパーム弾も効かないというなかなかの強者だった。成田亨によるシンプルなデザイン、地底を掘り進みそうな尖った顔、闇夜に光る目。茶色いボディが怪しく艶やか。やはりテレスドンには夜が似合う。

     造型は高山良策。ウレタン製の表面に布を貼ることにより、皺を表現。実相寺監督はテレスドンを「オケラのような奴」と言い表したという。よく自分の担当回の怪獣を揶揄する実相寺監督だが、怪獣愛は並々ならぬものがある。スペシウムで爆散という手法を嫌い、それぞれ異なる形の最期を迎えさせている。

     科特隊の内部をあえて暗くしたり、顔をドアップで撮ったり、芸術性のあるカットを挿入したりと、光と闇を操った「独創的」な絵作りも特徴的だ。

     空の上ではなく、足元の下に敵がいると想定し、地上を火の海へと化す脚本を書いた佐々木守。高度経済成長を謳歌していた日本人に、戦火に散っていった者たちの無念を思い出させようとしたのだろうか。ナパームで地上を焼き尽くしたカットは渾身の東京大空襲再現を意図しているようにも見える。或いは、1966年当時繰り広げられていたベトナム戦争の惨状を訴えようとしていたのだろうか。

     近年では、2015年の『ウルトラマンエックス』第3話「夜を呼ぶ歌」で地底女とテレスドンが登場。テレスドンがトルネードしながら突っ込むという新たな技を披露している。また、『ウルトラマンゼット』(2020)第4話「二号ロボ起動計画」ではジラースの怪獣メダルの力を得てエリマキテレスドンとして強化改造されている。シンプルゆえに汎用性が高い地底怪獣の代表格となった。

    cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

    cf.)テレスドン登場の『ウルトラマンゼット』第4話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6535953.html

    [参考]
    DVD『ウルトラマン』©1966円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/福田善之
    https://ja.wikipedia.org/wiki/アネット・ソンファーズ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/テレスドン
    にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
    にほんブログ村

    PVアクセスランキング にほんブログ村




    このページのトップヘ