ウルトラシリーズ史上、最も暗いとされる『ウルトラマンネクサス』(2004)。

 「ネクサス」(nexus)とは「絆」の意。「人と人との絆」をテーマに、希望・絆・進化といったファクターで新しいウルトラマン像を描いた作品である。

 この物語の主人公・孤門一輝は最終回まで変身しない。ウルトラマンに変身できる素質のある者は適能者(デュナミスト)と呼ばれ、第一のデュナミストの物語は映画『ULTRAMAN』で、第二以降のデュナミストの物語がこの『ネクサス』で語られている。

 視聴率的には失敗だったようだ。初回こそ5%台を記録したものの、その後は2 - 3%台に急落し、1%台の回もあったようだ。理由としては、夕方から朝の枠に変更になったことに加えて、低年齢層の視聴者が離れてしまったからだと言われている。なぜか。

 以下でその理由を3つ挙げてみよう。

1、怪獣がグロテスク。そして描写が怖い。『ネクサス』に登場する怪獣はスペースビーストと呼ばれ、宇宙から来たものとされている。彼らは人間の「恐怖」の感情を食料とするため、人間を捕食しては増殖していく。人間がビーストに捕食されるシーンが何度かあるが、まさかあそこまでやるとは・・・というシーンもある。


2、街の破壊など、円谷プロの伝統であるミニチュアを駆使した派手な特撮が少ない。
これは予算的な問題で、それまでの赤字が続いた経緯から、1話3000万以上掛けていた予算が1000万程に削られたそうだ。苦肉の策か、設定としてはウルトラマンが人知れず闘うために亜空間「メタ・フィールド」を張り、通常はその中でビーストと闘う、となっている。

3、ヒロインの悲劇。昭和のウルトラマンでもヒロインが死ぬことは何度かあったが、この『ネクサス』ではもっと残酷な運命がヒロインを襲うことになる。大人でも初見のときは暗くなる人もいるかもしれない(何度も観ていれば慣れてしまうが)。

 「ヒロインの部屋に飾られた大量の不気味な絵」「怪獣の攻撃で両親を殺されたうえに両親の身体を操られて捕らわれる少女」など、一部の場面について朝日新聞の記事で批判されたこともある。

 子どもが観たときにトラウマになりかねない表現が問題となったようだ。

 以上3点が大きな理由と考えられる。低年齢層の視聴者が離れたことにより、必然的にグッズ販売の方も不振となり、当初予定されていた全50話は全37話に削減された(他にDVDに収録されているスペシャルエピソードもある)。

 この作品をひとことで表現するなら、「悲壮」。とくに前半戦は観ていてかなり辛くなってしまう。

 しかしながら・・・
あのとき子どもだった人たちには、大人になってからもう一度観てほしいと思う。なぜなら、この作品の価値は大人になってからでないと分からないからだ。絶望を越えた先に希望の光を見出すデュナミストたち。そして怒涛のクライマックス、最終回で遂に変身を果たす孤門。

 また、『ウルトラマンエックス』(2015)第20話「絆-Unite-」ではエックスとの共演も果たし、メタ・フィールドの再登場が話題を呼んだ。孤門役だった川久保拓司も友情出演している。

cf.)「絆-Unite-」についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5931940.html


 『ネクサス』は今なお名作と呼んで愛するファンも多く、ウルトラシリーズの中で異彩を放っている作品である。


cf.)『ウルトラマンネクサス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5869472.html

[参考]
DVD『ウルトラマンネクサス』©2004円谷プロ・CBC
Blu-ray『ウルトラマンエックス』BOX2©︎円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンネクサス