1972(昭和47)年に放送が開始された『ウルトラマンエース』。どのように作られたのだろうか。
前年放送の『帰ってきたウルトラマン』は初代の『ウルトラマン』ほどの高視聴率には届かなかったものの、20%前後の安定した視聴率を獲得。第38話「ウルトラの星 光る時」では29・0%。最終回「ウルトラ5つの誓い」では29・5%にも達した。子ども向けの情報誌などでの盛り上がりや、関連玩具の売り上げも好調で、同年末には次回作の制作が決定していた。
新作では従来の王道路線から外れた革新的ヒーロー像が模索された。これには、1971年に『仮面ライダー』(毎日放送系)や『スペクトルマン』(フジテレビ系)が放送されるなど、TV特撮の戦国時代が始まっていたからである。
そこで、市川森一、田口成光、上原正三、という3人の脚本家がそれぞれ最初の企画書を用意する形となった。
『ウルトラセブン』からシリーズに参加していた市川森一は「ウルトラハンター」というヒーローを考案。これは現代のアダムとイヴ的な男女が合体変身する、という内容で、「北斗」と「南」の設定が書かれている。これは、キリスト教徒でもある市川が、作品にキリスト教的世界観を持たせたかったからだ。事実、自身の脚本回では十字架・ゴルゴダ・バラバなど、新約聖書から拝借したワードが多数散見される。
企画室の一員として『帰マン』の企画成立や脚本執筆に関わっていた田口成光は「ウルトラV」を考案。敵である「サタン星人」が地球生物と宇宙生物を合体させて作る「超獣」の設定が記されている。これは、『仮面ライダー』のショッカーや、『ミラーマン』のインベーダーなど、シリーズを通した敵が流行していたためと思われる。因みに、ショッカー首領の声を担当していた納谷悟朗がエースの声担当に抜擢されている。
『ウルトラQ』からシリーズに携わる古参の上原正三は、「ウルトラファイター」を考案。新たなウルトラマンをウルトラ5番目の兄弟として設定し、独自の研究を否定されて心が歪んだ竹中博士が人間に復讐すべく、マシンで怪獣を操る、というマッドサイエンティストを想定した。
これらの企画が検討され、ウルトラリングでの男女合体変身、ウルトラ兄弟、ヤプールと超獣製造機、などの細かい設定が誕生。「ウルトラA」として台本が制作された。
「ウルトラハンター」+「ウルトラV」+「ウルトラファイター」=「ウルトラA」というわけだ。
『ウルトラA』という名で制作進行され、子ども向け情報誌などでの宣伝もすべて「新ヒーロー・ウルトラA」とされていた。
・・・ところが、
大どんでん返しが起こる。放送直前になって、玩具メーカー・マルサンが販売していた「怪傑透明ウルトラA」という怪獣人形の存在が判明。商標登録の関係でタイトルや第1話の台詞、主題歌の歌詞もすべて「ウルトラマンエース」への差し替えを余儀なくされた。
これがきっかけで、『ウルトラ〇〇』という商標が取得できなくなったため、『エース』からは全て『ウルトラマン〇〇』という名称が主流となったのだ。
cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7831422.html
cf.)前作『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html
cf.)次作『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html
[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
DVD『ウルトラマンエース』©1972円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/帰ってきたウルトラマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンエース
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前年放送の『帰ってきたウルトラマン』は初代の『ウルトラマン』ほどの高視聴率には届かなかったものの、20%前後の安定した視聴率を獲得。第38話「ウルトラの星 光る時」では29・0%。最終回「ウルトラ5つの誓い」では29・5%にも達した。子ども向けの情報誌などでの盛り上がりや、関連玩具の売り上げも好調で、同年末には次回作の制作が決定していた。
新作では従来の王道路線から外れた革新的ヒーロー像が模索された。これには、1971年に『仮面ライダー』(毎日放送系)や『スペクトルマン』(フジテレビ系)が放送されるなど、TV特撮の戦国時代が始まっていたからである。
そこで、市川森一、田口成光、上原正三、という3人の脚本家がそれぞれ最初の企画書を用意する形となった。
『ウルトラセブン』からシリーズに参加していた市川森一は「ウルトラハンター」というヒーローを考案。これは現代のアダムとイヴ的な男女が合体変身する、という内容で、「北斗」と「南」の設定が書かれている。これは、キリスト教徒でもある市川が、作品にキリスト教的世界観を持たせたかったからだ。事実、自身の脚本回では十字架・ゴルゴダ・バラバなど、新約聖書から拝借したワードが多数散見される。
企画室の一員として『帰マン』の企画成立や脚本執筆に関わっていた田口成光は「ウルトラV」を考案。敵である「サタン星人」が地球生物と宇宙生物を合体させて作る「超獣」の設定が記されている。これは、『仮面ライダー』のショッカーや、『ミラーマン』のインベーダーなど、シリーズを通した敵が流行していたためと思われる。因みに、ショッカー首領の声を担当していた納谷悟朗がエースの声担当に抜擢されている。
『ウルトラQ』からシリーズに携わる古参の上原正三は、「ウルトラファイター」を考案。新たなウルトラマンをウルトラ5番目の兄弟として設定し、独自の研究を否定されて心が歪んだ竹中博士が人間に復讐すべく、マシンで怪獣を操る、というマッドサイエンティストを想定した。
これらの企画が検討され、ウルトラリングでの男女合体変身、ウルトラ兄弟、ヤプールと超獣製造機、などの細かい設定が誕生。「ウルトラA」として台本が制作された。
「ウルトラハンター」+「ウルトラV」+「ウルトラファイター」=「ウルトラA」というわけだ。
『ウルトラA』という名で制作進行され、子ども向け情報誌などでの宣伝もすべて「新ヒーロー・ウルトラA」とされていた。
第6話まではウルトラAとして作られていた。
・・・ところが、
大どんでん返しが起こる。放送直前になって、玩具メーカー・マルサンが販売していた「怪傑透明ウルトラA」という怪獣人形の存在が判明。商標登録の関係でタイトルや第1話の台詞、主題歌の歌詞もすべて「ウルトラマンエース」への差し替えを余儀なくされた。
これがきっかけで、『ウルトラ〇〇』という商標が取得できなくなったため、『エース』からは全て『ウルトラマン〇〇』という名称が主流となったのだ。
cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7831422.html
cf.)前作『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html
cf.)次作『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html
[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
DVD『ウルトラマンエース』©1972円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/帰ってきたウルトラマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンエース
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