『ウルトラマンエース』にはそれまでにない革新的ヒーロー像が求められた。その要素のひとつとして、北斗と南が男女合体変身する設定があるが、エース自体のデザインにもそれが反映された。


 もともとウルトラマンの口には仏像のアルカイックスマイルを彷彿とさせるデザインが起用されているが、エースにはさらに中性的なデザインが模索された。観音像をイメージした顔立ち、耳にはイヤリングのようにも見える形状、頭部のトサカには丸い穴を開けるなど、全体的に円形や丸みといった女性的要素が加わった。

cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7831422.html

 さらに、スーツ自体をそれまでのワンピース式ではなく、ツーピース式のセパレートスーツにして製作した。これは、『仮面ライダー』など他のヒーロー番組に負けないアクションを目指して動きやすさを追究したもので、スーツアクターが最初に脚部を履き、その後、上からかぶせた胴部を股間のホックで固定するという仕組み。しかし、撮影中に股間のホックが外れるアクシデントが多発したことで、このスーツは第2話までの使用となり、第3話以降は従来のワンピース式に戻った。


 ツーピース式はアトラクション用として使われた後、第40話「パンダを返して!」に登場するスチール星人に流用された。

第40話を観てみると、

・人間体のスチール星人が実に不気味だ。

・当時は上野動物園に中国から来たランランとカンカンがおり、空前のパンダブームだった。

・スチール星人が一瞬の内にパンダを盗んでしまう。

・老人に化けていたのを見破り追い詰める北斗。

・エースが宙を舞うオープンカットはツーピース式のときに撮影されたものなので、第3話以降の話にもツーピース式が映っているときがある。

・頭部の突起から炎を出すスチール星人。

・メタリウム光線を受け、この後爆発する。

・パンダを盗む宇宙人という訳の分からない設定が奇抜な面白い回だが、スチール星人自体はそれほど有名ではない。新作の『ウルトラマンゼット』などで登場したら面白いギャグ回になりそうだが、可能性は低いだろう。

 因みに、エースのデザインは東宝特殊美術部に所属していた鈴木儀雄によるもの。超獣デザインも担当した。

 また、ワンピース式では胸の隆起が若干おさえられ、微妙に形状が違っている。

cf.)『ウルトラマンエース』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5915827.html


[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
DVD『ウルトラマンエース』©︎1972円谷プロ