1974(昭和49)年放送の『ウルトラマンレオ』。当時は第4次中東戦争勃発に伴う石油危機によって、原油価格が高騰しており、フィルムやミニチュア、着ぐるみなど、製作に必要な資材の大半が石油加工品であった特撮現場は厳しい製作状況に追い込まれた。そのため、本編・特撮ともに合成に頼らないアクションシーンを重視することが大前提とされた。
また、『ノストラダムスの大予言』(五島勉.著 祥伝社)や、『日本沈没』(小松左京.著 光文社)といった終末観を描いた作品が話題になっていたことや、ブルース・リー主演の映画『燃えよドラゴン』のヒットによるカンフーブームが起こっていたため、それらの要素が作品に投影され、「親しみやすくなりすぎたスーパーヒーローに頼りがちな現代っ子の甘えグセを払拭すべく、自分の道を自分で切り開く孤独なヒーローの創造」が図られ、「鍛錬や修練によってウルトラマンになっていく」主人公が設定された。
世相の反映の例として、第1話では島が沈んだり、東京で大洪水が起こる。また、今作から殺陣師(擬斗)が導入され、渡辺安章が担当している。
最初の企画書「ウルトラマンL(レオ)」では、主人公はおおとりレオ。故郷のM77星を怪獣・宇宙人に蹂躙され、地球を第二の故郷としていた。宇宙パトロール隊の川上鉄太郎隊長の娘・カオリが所属するウルトラスポーツクラブの指導員を務めている。という設定。
続く企画書「ウルトラマンレオ」で製作がスタートするのだが、脚本執筆の段階で役名や防衛隊、故郷が全滅したという設定となる。さらに、川上隊長としての出演オファーを受けた森次晃嗣が、「ダン役でなら出演する」と言ったため、モロボシ・ダンが隊長として出演することになった。しかし、第1話でセブンが変身不可能になる設定は、森次晃嗣の意図とは違っていた。
cf.)『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html
放送開始後、「ゲンを鍛えるダンの姿が過激である」との投書が多く寄せられ、2クール以降の番組強化案では改善が図られ、日本民話シリーズ、北海道ロケ、弟アストラや伝説の超人キングの登場など、落ち込む視聴率のテコ入れの為に路線変更や試行錯誤がなされた。
また、製作費のさらなる緊縮を余儀なくされ、シリーズ終盤では防衛隊MAC基地のセット維持費や人件費削減も兼ねてか、MAC全滅という展開となり、モロボシ・ダンも行方不明。レオの「孤独なヒーロー像」がさらに強調される結果となった。
レオのデザインは『エース』から美術を担当していた鈴木儀雄によるもの。L77星出身であるため、他のウルトラマンとは一線を画するデザインにしなければならず、苦心したという。
cf.)『ウルトラマンエース』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5915827.html
頭部の形状にポイントを置き、大空に飛翔する雄々しいイメージを投影すべく、「頭上の翼に可能性の広がり、切れ上がった眉に挑む勇気、瞳に深い優しさと一抹の孤独感を込めた」デザインを多数作成。NGデザインのひとつは、『ウルトラマンタロウ』のバルキー星人に転用された。
プロデューサーの熊谷健とともに、複雑な頭部の粘土造形を完成させた。
検討用デザインには、腹部のシークレットサインがなく、体にシルバーのラインが走っている。また、片手にしかブレスレットをつけていない。
cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/8027623.html
2020年の新作『ウルトラマンゼット』ではレオの弟子・ゼロのさらなる弟子が活躍するということで、当時の設定である宇宙拳法が受け継がれている。これはレオの不動の人気の証でもある。
cf.)前作『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html
cf.)続くアニメ作『ザ☆ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5938519.html
cf.)実写特撮復活作『ウルトラマン80』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6276509.html
[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
DVD『ウルトラマンレオ』©1974円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/オイル・ショック
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