1987(昭和62)年に全米でTV放送されたアニメ作品『ウルトラマンUSA』は、アメリカのハンナ・バーベラ・プロダクションと円谷プロの合作で、実製作はスタジオ・ザインと葦プロダクションが行った。英題は『ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS』。日本では1989年に劇場公開された。
『ウルトラマン80』で一旦TVシリーズが終了して以降、円谷プロは過去シリーズの再編集作品である映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』や新規撮影と再編集を組み合わせた映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』などを製作してきたが、ファンからは新シリーズ待望の声が高まっていた。
cf.)『ウルトラマン80』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6276509.html
当時社長だった円谷皐はアメリカとの合作を構想。『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のノベライズを手掛けたドナルド・F・グルートにより、「ウルトラマン / ヒーロー・フロム・ザ・スターズ」という特撮作品検討用シナリオが書かれた。日本の特撮映画ファンであったグルートは「巨大怪獣VSヒーロー」という基本を押さえつつ、神話的世界観を強めたウルトラマン像や、アメリカの主要都市を舞台にしたアクション描写を盛り込んだ。なお、これにはSF・モンスター映画の世界的コレクターであるフォレスト・J・アッカーマンの特別出演も検討されていた。
この初期構想が紆余曲折を経て、アニメ作品『ウルトラマンUSA』となる。本作のポイントは3人のウルトラマンの登場である。セブンをモチーフとしてデザインされた「ウルトラマンスコット」。初代ウルトラマンやゾフィーをモチーフとしてデザインされた「ウルトラマンチャック」。そして、ウルトラシリーズ史上4人目の女性ウルトラマンとなる「ウルトラウーマンベス」である。
ハンナ・バーベラ側から提出された初期デザインには、マントがついていた。これは「マントもつけずに空を飛ぶヒーロー」という概念が理解できなかったからだと思われる。日米間で打ち合わせが重ねられ、ようやく決定稿のデザインに落ち着いたという。
因みに、3人のウルトラマンの実写版スーツが後に製作され、『新世紀2003 ウルトラマン伝説 THE KING'S JUBILEE』で登場している。
モンスターデザイナーのひとり・雨宮慶太は以前企画されていた映画『ウルトラQ モンスターコンチェルト』の怪獣デザイン公募に応募していたことがきっかけで起用され、杉浦千里などとともにソーキンモンスターをデザインした。雨宮慶太は後の『牙狼』シリーズ監督で有名。杉浦千里は後にウルトラマンゼアスやウルトラマンコスモスエクリプスモード、その他怪獣たちのデザインも手掛けているが、惜しくも2001年に亡くなっている。
cf.)『ウルトラマンゼアス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6013793.html
cf.)『ウルトラマンコスモス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5982670.html
1987年度の全米視聴率中、第4期の子ども向けスペシャル番組で第3位という好成績を残した本作は、後の『ウルトラマングレート』『ウルトラマンパワード』といった海外版ウルトラマンに繋がる端緒となった記念すべき作品である。
cf.)『ウルトラマングレート』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5948869.html
cf.)『ウルトラマンパワード』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5950759.html
[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
Blu-ray『ウルトラマンUSA』©円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンパワード
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