『ウルトラマンガイア』(1998)の終了とともに、新シリーズの製作は一旦休止となるが、2001(平成13)年、『ウルトラマンコスモス』の製作がスタートする。この年は、円谷英二生誕100周年&ウルトラシリーズ35周年の記念の年。当初は10月放送開始予定だったが、7月7日が円谷英二の誕生日ということで、放送が3か月繰り上げられた。

 企画として「怪獣を殺さないウルトラマン」の創造が図られる。この「怪獣保護」というコンセプトは、TVシリーズ放送前に製作された映画『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』で描かれた「異者との共存」というテーマを練り直したもの。渋谷浩康プロデューサーによると「ウルトラマンはもともと、強さと優しさの両方を持ち合わせており、その優しさを前面に出したかった」という。


 しかしこの設定は「怪獣と戦って、最後は光線技で粉砕する」という、ウルトラシリーズのカタルシスを否定することにも繋がる。この問題を解決すべく、製作陣は「ルナモード・コロナモード」「カオスヘッダー」の設定を作った。通常は慈愛に満ちた「ルナモード」で対応するが、「カオスヘッダー」に憑りつかれて凶暴化した怪獣に対しては強さの「コロナモード」で対応。 光線技で怪獣を落ち着かせたり、「カオスヘッダー」を取り除く。一方で、「カオスヘッダー」のみで構成された怪獣や凶悪宇宙人は容赦なく粉砕する。この展開は「カタルシスに欠ける」という批判もあった一方で、未就学児や保護者からは概ね歓迎されたという。

   放送期間中に、アメリカで9.11同時多発テロ事件が起きるなど、世相は殺伐としており、そんな社会へのアンチテーゼとしても話題を呼んだ。


 劇場版も3作製作され、息の長いシリーズとなった。因みに、TVシリーズ放送期間中、放送開始前の2000年に起きた傷害・恐喝事件の容疑者として主演の杉浦太陽が誤認逮捕される事件が起き、一時放送が中断するが、不起訴・起訴猶予処分となり、法的に決着がついたことで放送が再開された。


 コスモスのデザインは、ルナモード・コロナモードは丸山浩が担当。ルナでは初代ウルトラマンのマスクを意識し、耳の形が三日月を模している。額のクリスタルは演出の都合上、飯島監督の要望で付け足された。コロナではウルトラセブンのマスクを意識し、耳は太陽を模している。物語中盤で登場するエクリプスモードは杉浦千里がデザインを担当。マスクはルナ・コロナ両方を意識している。

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 最終回ではシリーズを通した敵「カオスヘッダー」さえも殺さずに救うという、新境地を開いた。ウルトラシリーズ史上、最も優しいウルトラマンとして今なお強烈な個性を放っている。

cf.)前作『ウルトラマンガイア』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5911369.html

cf.)次作『ウルトラマンネクサス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5869472.html

[参考]
『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
DVD『ウルトラマンコスモス』©円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンコスモス
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