『ウルトラマンオーブ』(2016)の設定やキャラクターの名称はどのように考案されたのだろうか。その一部を紹介したい。
・当初、脚本上での約束「サブタイを探せ!」は存在しなかった。しかし、第1話の脚本に「鳥を見た」という言葉を見つけたシリーズ協力の岡崎聖が思いつき、全編通して過去シリーズのサブタイトルを脚本に入れるという約束事にした。ファンとしては探すのが面白いが、脚本家は上手く物語に絡めるのに苦労したそうだ。
・魔王獣の「マガ」は第1話の登場怪獣マガバッサーの名称考案時に生まれた。当初は「キングバッサー」という名前だったが、そこから「ギガバッサー」とか「メガバッサー」と変遷していった。最終的に岡本有将が「マガは?」といった案を出し、「マガバッサー」となった。因みに、岡本有将は『タイガ』(2019)のプロデューサーとして名を連ねている。また、マガジャッパの着ぐるみはゾアムルチの改造である。
・クレナイガイの由来。昭和の漫画『紅三四郎』のバイク「紅号」から「クレナイ」、漫画『NARUTO』の「マイト・ガイ」から「ガイ」がそれぞれ取られた。また、最初はギターを持たせる話もあった。そこから、バイオリン、トランペット、フルート、ギロなどアイデアが変遷し、最終的にハーモニカ(オーブニカ)となったという。
・松戸シンの由来。「マッドサイエンティスト」の「マッド」を「マツド」とし、『帰ってきたウルトラマン』で坂田健役を演じた岸田森(きしだしん)から「シン」を取った。シンを演じたねりお弘晃はオーディションでおもむろに白衣を取り出したそうで、その時点で「シンはこいつだ」と思われたことが抜擢された決め手となった。因みに、ジェッタを演じた髙橋直人は自己紹介で太宰治について語ったという。
・SSPとガイの関係性は当初、少年探偵団と明智探偵のような関係性が想定されていた。また、『ウルトラQ』(1966)のレギュラーの3人組もオマージュとして意識された。子どもをレギュラーにする案もあったが、その子の演技のもともとの力量にかなり左右されてしまい、演技指導・コントロールが難しくなるなどの問題が生じるため、大人の3人組となった。また、当初のプロットではSSPの事務所の上の階にガイが引っ越してきたり、ヴァイオリンの音で敵の洗脳を解いたり、といった設定もあったという。
・ジャグラーの設定。性格や服装で色々勘案され、迷走していたというジャグラー。当初は鎖などをジャラジャラとつけたデスメタル系の服装の案もあった。メイン監督・田口清隆の「性格はジョーカーで、格好はブルース・ウェインにしましょう(『バットマン』より)」の一言で活路が開けたという。また、「ジャグラー」だけだと商標登録ができないので、プロデューサーの鶴田幸伸が「ジャグラス」を付け足し、「ジャグラス・ジャグラー」となった。
・ビートル隊のモチーフはもちろん科特隊。リアリティを求めるため設定し、ゼットビートルはフルCG。因みに田口監督には「科特隊をいつかちゃんと演出したい」という思いがあり、実写版パトレイバーは科特隊へのオマージュも含まれているという。
・タマユラ姫の由来。「魂がゆらゆらしている」から「タマユラ」が着想された。後から調べると勾玉(まがたま)の意もあり、理由付けは後からなされたという。因みに、ビル前に立つ姫を左下から撮影しているのは脚本家の内田裕基。
・「お借りします」のフレーズはシリーズ構成の中野貴雄が発案し、監督の田口清隆が「子どもに真似してもらうには敬語っていいじゃないですか」と賛成したことで決定した。
プロデューサー・鶴田幸伸によると、狙っているわけでもないのに全てが予定されていたかのごとく次々と上手い具合に決まっていった。全てが神懸かっていたシリーズだった。
cf.)『ウルトラマンオーブ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6231535.html
[参考]
Blu-ray『ウルトラマンオーブ』©2016円谷プロ
You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #167 in 大怪獣サロン
https://www.youtube.com/watch?v=-z4cUsdtrKg
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