『ウルトラマンエックス』(2015)第12話「虹の行く先」はエクシードエックスの登場回。また、後のエピソードに繋がるギナ・スペクターやダークサンダーエナジーも登場する要素の多い重要回でもある。脚本は内田裕基。監督は坂本浩一。

・坂本監督はこの年、韓国での仕事がメインだったので、『エックス』にはフルで参加できない状態だった。そこで、プロデューサーの岡崎聖の依頼により、新ビークルやパワーアップ形態回、ゼロやギンガ客演回のみの参加となった。

・当初は「虹の大地」というサブタイトルだったが、脚本の内田裕基は違和感を感じ、第3稿くらいでこっそり「虹の行く先」に変えたらそのままOKが出たという。デビュー作だったため、自分の考えたサブタイトルとなって嬉しかったと語っている。

・本来、どうしてエクスラッガーが出てくるのかをドラマで描くのがセオリーだが、他にも要素が多く、とてもそんな余裕がないので、そこが目立たないように密度と勢いのある話にしようと坂本監督が先導。実際、本当に勢いのある回となった。

・ギナ・スペクター登場。演じているのはアクション女優の佃井皆美。
安室奈美恵に憧れてダンスなどを始めたが、歌唱力がないことに気づき、アクションクラブ・JAEへ入った。しかし、練習は死ぬほど辛かったという。坂本監督作品にはよく登場している。『仮面ライダー鎧武』(2013)で仮面ライダーマリカ / 湊耀子役として、変身前と変身後のスーツアクターの両方を演じたこと等でも有名。
アスナ役の坂ノ上茜も新体操出身でアクションを得意とするので、女同士の戦いを撮りたかったという。

・脚本の内田裕基はルイに「コスプレのお姉さん」と表現させている。このあたりの感覚も若い内田裕基ならでは。ルイとは年齢も近いので、書きやすかったという。因みに、ギナ・スペクターの衣装は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(2008)に出てくるペダン星人ハーランのものの改造。

・サイバーゴモラに力を貸してほしいと頼むアスナ。後の第19話「共に生きる」でゴモラに訴えかけるシーンにも繋がる伏線として、この回からアスナとゴモラの絆も描かれ始める。

・ザラガス対サイバーゴモラ。坂本監督はザラガス好きのため、登場怪獣として選んだ。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009)でもザラガスとゴモラを戦わせており、今回はそのセルフオマージュである。

・エクスラッガーを見つけてエックスを取り戻した大地。「前より大地を近くに感じる」という台詞や、「お前を離さない!」という台詞は、ともすれば変な意味に捉えられかねないが、それまでの大地とエックスの絆の総決算的な回なので敢えて言わせている。ユナイトは人間同士の話ではなく、心が繋がることでもあり、エックスを一度失った大地の喪失感は相当のものだったろうと推察しての台詞である。

・エクシードエックス登場。デザインを担当した後藤正行によると、相当の難産だったという。バンダイから提示されたイメージイラストは全身が虹色に光っている感じのデザインだったが、現実的には無理で、エフェクトを絶えず入れるわけにもいかないため、エクスラッガーも含めてデザインでなんとかまとめなければならない。「圧倒的に光る」というコンセプトのエクスラッガーをエクシードエックスの意匠へ落とし込めた後も、全体の色で苦労したという。

・ルイの「めっちゃデコってるよ~!」という台詞は内田裕基のアイディア。新ヒーローが出てきたらリアクションするのが坂本監督あるあるで、ここでも若い感覚が冴えている。内田裕基によると「怒られるかな」と思ったが、すんなり通ったという。

・ツルギデマーガのデザインは三ノ輪さりとが担当。坂本監督と品田冬樹の意見をデザインとしてまとめた。パワーアップ前のエックスでは少ししか投げられていないが、エクシードエックスになってからは宙空に大きく飛ぶほど投げられており、このあたりでもレベルアップが表現されている。ふっとぶツルギデマーガはワイヤーアクションである。

・エクシードエクスラッシュ。この技は邪気退散的な効果のみに留められた。その理由はエックス自身がカッコいいデザインで、ザナディウム光線も素晴らしい技なので、後半戦に出なくなるのは勿体ないと坂本監督が感じたため。また、従来のウルトラマンとの差別化でもある。

・また、商戦を意識して、大地が持つエクスラッガーの大きさも玩具版と同じサイズになっている。なるべく画面にアイテムが露出するよう、インナースペースでの操作カットも意識的に採り入れられている。この辺りは坂本監督が円谷プロに吹き込んだ良い風潮であると言える。

・大地に抱きつくアスナ。この大胆な展開もこの回の驚きポイントのひとつだ。
近年の円谷プロとしては、あまりベタベタした恋愛表現は好まず、淡い恋心程度に留めるパターンが多いが、坂本監督はどちらかといえば色恋沙汰に肯定派なのではないか。内田裕基の若い感覚もそれに乗っかった節がある。

内容がてんこ盛りで大変な回だが、勢いがあり、エクシードエックスの華々しい登場回となった。こんな回を若い内田裕基は(坂本監督のフォローがあったとしても)よくやり遂げたなという印象である。因みに、打ち合わせの際、坂本監督は朝からレッドブルを飲んで気合いを入れていたという。

cf.)続く第13話「勝利への剣」についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6208999.html

cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

[参考]
Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
https://ja.wikipedia.org/wiki/佃井皆美
You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #120
https://www.youtube.com/watch?v=rMqNGsVkYA4
You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #147feat.アルファスタントSP
https://www.youtube.com/watch?v=JdnIwdear34
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