2016年に放送された『ウルトラマンオーブ』は「斜め上を目指せ」をキーワードに、従来の王道路線から一線を画し、独創性を重視した作品として製作された。
『ウルトラマンギンガ』(2013)以降、テレビシリーズは「ウルトラマン列伝」および「新ウルトラマン列伝」の番組枠内での位置づけだったのに対し、本作は単独でタイトルを掲げての放送が実現。放送話数も増え、全25話となっている。
メイン監督は前作『エックス』(2015)に引き続き田口清隆。アベユーイチ、市野龍一、冨田卓、武居正能も監督として名を連ねている。脚本陣は全13名と多く、シリーズ構成は中野貴雄と小林雄次。前作までアシスタントプロデューサーだった鶴田幸伸が初プロデュースを手掛ける。
ウルトラマンオーブ最大の特徴は、歴代のウルトラマン2人の力を借りて変身することである。企画当初は単純に2人のウルトラマンが合体変身するだけであったが、会議の中で、「では変身するそもそもの素体はどういうものなのか?」という疑問が生まれ、素体となるオーブオリジンが何らかの理由で力を失ってしまった、という設定となった。これにより、物語の縦軸に「本来の自分を取り戻す」というテーマが据えられることになる。プロデューサーの鶴田幸伸は「自分が何者だと言い切れる人は案外いない」と語っており、オーブオリジンとなる第17話までは、オーブに「ウルトラマン」と名乗らせていない。
主人公のクレナイ・ガイは防衛隊に所属しないハードボイルドな風来坊という設定。これはシリーズ構成の中野貴雄の意向が強く、『セブン』(1967)の主人公モロボシ・ダンをはじめ、自身が子どもの頃のヒーローは流れ者が多かったから。また、ライバルのジャグラス・ジャグラーも「風来坊には好敵手がつきもの」という理由から中野貴雄が提案した。レギュラーメンバーに関しては当初は少年探偵団という案もあったが、怪奇現象などの調査団・SSPが設定された。
オーブのデザインは後藤正行が担当。
初期デザインでは、フュージョンアップ4形態が先行して描かれていたが、決定稿ではオーブオリジンが最初にデザインされ、そこから派生して各フュージョンアップ形態が描かれた。
初代ウルトラマンを基本デザインとし、従来のパワーアップ形態は要素が追加され複雑化していくところを、オーブオリジンに関しては要素を削ぎ落し、よりシンプルでスタイリッシュなデザインとなった。アクションに関しても、初代ウルトラマンを意識してやや野生的なスタイルに寄せている。
ジャグラー魔人態のデザインも後藤正行が担当。太陽のイメージを持つウルトラマンに対して月をイメージしており、ヴェネツィアの月の面と西洋甲冑、そして忍者をモチーフとしてデザインがまとめられた。
因みに、ジャグラーは2020年放送の『ウルトラマンゼット』では防衛隊の隊長役として再登場を果たすこととなる。
cf.)『ウルトラマンゼット』第5話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6593557.html
本作は『スターウォーズ』シリーズのように、ガイとジャグラーの因縁を軸に置いた「エピソード10構想」が存在し、その中には映像化されていないストーリーも含まれている。『THE ORIGIN SAGA』(2016)がエピソード1、テレビシリーズがエピソード6、劇場版がエピソード7、『ウルトラファイトオーブ』(2017)がエピソード9に当たる。
cf.)エピソード10構想についてはこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7233516.html
従来の殻を破るべく設けられた独自の設定と壮大な世界観を持つ本作は多くのファンを獲得し、ニュージェネレーションの中でも高い人気を誇っている。
cf.)各キャラクターの由来や設定についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6077982.html
cf.)オープニング演出についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5929767.html
cf.)オーブオリジン誕生秘話についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5929276.html
cf.)前作『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html
cf.)次作『ウルトラマンジード』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6238261.html
[参考]
Blu-ray『ウルトラマンオーブ』©2016円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンオーブ
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