2019年放送の『ウルトラマンタイガ』はタロウの息子・タイガが活躍する令和最初のウルトラマン作品。

 メイン監督は市野龍一。シリーズ構成は林壮太郎、中野貴雄。林壮太郎が用意したプロットが採用された。前作『R/B』(2018)はコメディタッチであったことから、その反動で本作ではハード路線に振っている。主人公・ヒロユキを民間警備組織の社員と設定し、タイガ・タイタス・フーマの3人のウルトラマンがヒロユキの中に宿り、3人が入れ替わって闘うというスタイルとなった。

 「多様性」をテーマとし、地球で密かに暮らす宇宙人といかに共存できるか、異者を受け入れることができるか、が作品を通して問われており、今日におよぶ在日外国人問題等にも通じるものがある。

 メイン監督の市野龍一は自身が子どもの頃に夢中になったウルトラマンの魅力に立ち返ることを提案し、連続ドラマ性も残しつつ、基本的には1話完結の中でどれだけ面白いものができるかにこだわった。また、怪獣も消費される使い魔的な扱いではなく、出自や現れる理由もしっかり描くことを意識している。

 シリーズを通した敵として、『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』(2019)で出て来たウルトラマントレギアが登場。タロウの旧友であり、超全集に収録された小説『トレギア物語/青い影』にはいかにして闇に堕ちていったかが描かれている。 


 3人のウルトラマンのデザインは後藤正行が担当。タイガのデザインは、若さを見せるために目を大きくして童顔に見えるように意識し、タロウとの差別化から角の向きや形状を異なるものとしている。

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タイタスのデザインは、体色が銀色だと筋肉質体型がぼやけてしまうことから、黒を基調とし、引き締めている。設定監修の足木淳一郎が40周年を迎える『ザ☆ウルトラマン』(1979)ファンだったことから、U-40出身のウルトラマンとしている。

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フーマのデザインは、スピード系であることからシンプルにまとめられた。トサカの形状もスピード感を意識している。出身はO-50とされた。
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 トレギアのデザインも後藤正行が担当。デザイン段階では設定が固まっていなかったため、後藤の独自解釈でウルトラマンのアイデンティティを否定しており、特徴である顔を仮面で隠し、自分でむしり取ったカラータイマーから出る光を拘束具で封印しているイメージとなった。尖った爪先は初代ウルトラマンのBタイプを意識している。


 ボイスドラマ『トライスクワッド ボイスドラマ』もYou Tubeにて同時に展開され、足木淳一郎による演出で、3人のウルトラマンの過去が明かされるなど、作品世界の補完が試みられている。

 タロウの息子の物語ではあるが、『タロウ』(1973)へのオマージュ色はなく、『タロウ』を知らなくても楽しめる内容である。トレギアの策略により怪獣や宇宙人が犠牲になる回が多く、ハードに振り過ぎた内容や、カタルシスだけでなく後味の悪い回もあり批判もあったが、近年ではより現実社会に寄せたスッキリとしない終わり方の作品もあり、本作も世相を表したひとつのパターンを提示していると言える。

cf.)前作『ウルトラマンR/B』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6244727.html

cf.)次作『ウルトラマンゼット』総論はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/8275836.html

[参考]
Blu-ray『ウルトラマンタイガ』©2019円谷プロ
『ウルトラマンタイガ 超全集』編著:てれびくんデラックス 出版:小学館
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンタイガ
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