『ウルトラマンタロウ』第33話「ウルトラの国大爆発5秒前!」はテンペラー星人とウルトラ兄弟が登場する前後編の前編。脚本は佐々木守。監督は真船禎。特殊技術は山本正孝。
・ウルトラ兄弟がタロウに招待されて地球に飛んでくるシーンで挿入される花々のカット。これは真船監督が1972年に沖縄で撮影したもの。「地球の平和と美しさを表現したくて」と語っている。
・ウルトラ兄弟がタロウに招待されて地球に飛んでくるシーンで挿入される花々のカット。これは真船監督が1972年に沖縄で撮影したもの。「地球の平和と美しさを表現したくて」と語っている。
・ウルトラ兄弟がウルトラの国を留守にしていることが、動くサルの人形によって告げられる。ライティングも紫で不気味さを醸し出している。佐々木守脚本の凄みを感じる。また、サブタイトルは「ウルトラの国大爆発5秒前!」と書かれているが、ウルトラの国襲撃に関しては冒頭でしか動きがなく、しかもテンペラー星人は爆撃せずに地球へ移動する。本編はほとんど地球で展開されるため、単に大げさなサブタイトルで視聴率を稼ぎたかっただけと思われる。
・兄弟たちの人間態のシーン。タロウに招待されてバーベキュー大会。これだけで肩に力を入れずに観られる作品であることが分かる。宇宙パトロールのために遅れてくるゾフィーを待とうというタロウに対し、「ゾフィーのことなんかいいよ」と言うセブンが笑える。先に食べ始める兄弟たち。因みにロケ地は三浦半島の剣崎海岸。真船監督がチョイスした。真船監督は篠田三郎とは初対面だったが、素直で一生懸命やる、とってもいい役者で、とても好感を持ったと語っている。演技は黒部進や森次晃嗣がリーダーシップを執ったという。
・街にテンペラー星人が登場。「ウルトラ兄弟、どこだよ~」と暢気な声が街に響く。
テンペラー出現をゾフィーが知らせに来る。タロウが海岸までおびき出すことに。走り方もコミカルで面白い。
・兄弟たちの人間態のシーン。タロウに招待されてバーベキュー大会。これだけで肩に力を入れずに観られる作品であることが分かる。宇宙パトロールのために遅れてくるゾフィーを待とうというタロウに対し、「ゾフィーのことなんかいいよ」と言うセブンが笑える。先に食べ始める兄弟たち。因みにロケ地は三浦半島の剣崎海岸。真船監督がチョイスした。真船監督は篠田三郎とは初対面だったが、素直で一生懸命やる、とってもいい役者で、とても好感を持ったと語っている。演技は黒部進や森次晃嗣がリーダーシップを執ったという。
・街にテンペラー星人が登場。「ウルトラ兄弟、どこだよ~」と暢気な声が街に響く。
テンペラー出現をゾフィーが知らせに来る。タロウが海岸までおびき出すことに。走り方もコミカルで面白い。
・おびき出し作戦に失敗、ウルトラ兄弟のもとに戻ってくるタロウ。ゾフィーは厳しくタロウを突き返し、ひとりで行ってこいと言う。エースやジャックはタロウに年代が近いためか、すぐ助けに行こうとするが、マンやセブンはゾフィーの考えに同調し、2人を制止する。
・ZATの隊員たちに憑依するウルトラ兄弟。『帰ってきたウルトラマン』(1971)の憑依シーンのオマージュ。エースは上野隊員、ジャックは南原隊員、セブンは北島隊員、マンは荒垣副隊長、そしてゾフィーはゲストの大谷博士。この大谷博士を演じるのは竜崎勝(かつ)。アヤパンこと高島彩の父である。
・しかし、テンペラーは強かった。電撃ムチの猛攻に敗れるタロウ。テンペラーのデザインも恐ろしさがまったくなく、牧歌的な質感が非常に良い。
・栄一のウルトラマンボールに自身を縮小して入り、栄一に投げてもらい、一瞬のうちに間合いに入り込むタロウ。さながら桃太郎だ。
・そのままテンペラーの中に入り込み、内部から爆発させる。ウルトラ兄弟たちに胴上げされるタロウ。シュールな絵作り。そんなに体が上がっておらず安全志向のところがまたたまらなく面白い。
真船監督は、『タロウ』をホームドラマであると語る。ウルトラマンたちをファミリー化し、人間のように描く流れとなったのは社会的な価値観の変化があったからだと推測する。1970年安保闘争、1971年浅間山荘事件、1972年沖縄返還・・・。それまでは物の考え方がシリアスで、人間対社会、個人対組織、という厳しい対立が続いていたが、1973年頃になると、革命も闘争も無意味であるという虚無感が時代を覆う。ある種の絶望感の中で、発想が社会から家族へシフトしていき、小市民的な生活で幸せになりたいと考えるようになった。その流れでウルトラシリーズも『タロウ』で完全な家族主義が導入されるようになったのではないか、という。
こう考えると、真船監督が冒頭で花々のカットを入れた意味も分かる気がする。
因みに、タロウの名前の原案はウルトラタロウ。当初は「ジャック」や「ジョー」が考えられていたが、小学館編集部の福島征英が子ども向け情報誌『よいこ』の編集に携わっていた頃、アルバイトの女の子に「何かないかな」と訊いたところ、「男の子だったらタロウよね」と言い、リストの中に「ウルトラタロウ」が加わった。後に正式に円谷プロの満田かずほが「ウルトラマンタロウ」と命名することになる。この女の子がいなかったら、タロウは他の名前だったかもしれない。
cf.)続く第34話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6262187.html
cf.)『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html
[参考]
DVD『ウルトラマンタロウ』©1973円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/竜崎勝
https://ja.wikipedia.org/wiki/西脇政敏
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・ZATの隊員たちに憑依するウルトラ兄弟。『帰ってきたウルトラマン』(1971)の憑依シーンのオマージュ。エースは上野隊員、ジャックは南原隊員、セブンは北島隊員、マンは荒垣副隊長、そしてゾフィーはゲストの大谷博士。この大谷博士を演じるのは竜崎勝(かつ)。アヤパンこと高島彩の父である。
・一方、行方不明のZATに対して、本部では死んだことになっていた。遺影も飾ってある。このあたりの展開も笑いを誘う。
・大谷博士の息子・栄一「ちっくしょー!おれひとりだってテンペラー星人を倒してやる!」
子どもがひとりで怪獣に立ち向かおうとガッツを見せるのも昭和シリーズならでは。栄一を演じるのは西脇政敏。
『エース』(1972)第26-27話の坂本ヒロシ役、第35話の浅倉雪夫役、
『タロウ』第17-19話の小林タケシ役を演じている。
同じシリーズで違う役として再登場するのは昭和シリーズではよくあること。
・隊員たちに憑依しているウルトラ兄弟たちは、東光太郎に正体を隠したまま、冷たく接する。
光太郎は逆ギレしてテンペラーに立ち向かう。
・大谷博士の息子・栄一「ちっくしょー!おれひとりだってテンペラー星人を倒してやる!」
子どもがひとりで怪獣に立ち向かおうとガッツを見せるのも昭和シリーズならでは。栄一を演じるのは西脇政敏。
『エース』(1972)第26-27話の坂本ヒロシ役、第35話の浅倉雪夫役、
『タロウ』第17-19話の小林タケシ役を演じている。
同じシリーズで違う役として再登場するのは昭和シリーズではよくあること。
・隊員たちに憑依しているウルトラ兄弟たちは、東光太郎に正体を隠したまま、冷たく接する。
光太郎は逆ギレしてテンペラーに立ち向かう。
・しかし、テンペラーは強かった。電撃ムチの猛攻に敗れるタロウ。テンペラーのデザインも恐ろしさがまったくなく、牧歌的な質感が非常に良い。
・栄一のウルトラマンボールに自身を縮小して入り、栄一に投げてもらい、一瞬のうちに間合いに入り込むタロウ。さながら桃太郎だ。
・そのままテンペラーの中に入り込み、内部から爆発させる。ウルトラ兄弟たちに胴上げされるタロウ。シュールな絵作り。そんなに体が上がっておらず安全志向のところがまたたまらなく面白い。
真船監督は、『タロウ』をホームドラマであると語る。ウルトラマンたちをファミリー化し、人間のように描く流れとなったのは社会的な価値観の変化があったからだと推測する。1970年安保闘争、1971年浅間山荘事件、1972年沖縄返還・・・。それまでは物の考え方がシリアスで、人間対社会、個人対組織、という厳しい対立が続いていたが、1973年頃になると、革命も闘争も無意味であるという虚無感が時代を覆う。ある種の絶望感の中で、発想が社会から家族へシフトしていき、小市民的な生活で幸せになりたいと考えるようになった。その流れでウルトラシリーズも『タロウ』で完全な家族主義が導入されるようになったのではないか、という。
こう考えると、真船監督が冒頭で花々のカットを入れた意味も分かる気がする。
因みに、タロウの名前の原案はウルトラタロウ。当初は「ジャック」や「ジョー」が考えられていたが、小学館編集部の福島征英が子ども向け情報誌『よいこ』の編集に携わっていた頃、アルバイトの女の子に「何かないかな」と訊いたところ、「男の子だったらタロウよね」と言い、リストの中に「ウルトラタロウ」が加わった。後に正式に円谷プロの満田かずほが「ウルトラマンタロウ」と命名することになる。この女の子がいなかったら、タロウは他の名前だったかもしれない。
cf.)続く第34話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6262187.html
cf.)『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html
[参考]
DVD『ウルトラマンタロウ』©1973円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/竜崎勝
https://ja.wikipedia.org/wiki/西脇政敏
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