『ウルトラマン』(1966)第22話「地上破壊工作」はテレスドン登場回。脚本は佐々木守。監督は実相寺昭雄。特殊技術は高野宏一。

 実は地球には地底人がおり、地上に攻撃を仕掛けてくる。当時のSF界で流行っていた「地球空洞説」がこの回のモチーフではないかとされている。

・パリ本部のアンヌ・モーハイム隊員を本人かどうか光線チェックするキャップ。いきなり銃を向けるので一瞬ドキッとする演出。

・光線チェックされたカード。「PAR-24 ANNE MORHIM」と書いてある。パリ本部の24番目の隊員ということだろうか。

・ロケット操縦の技術指導顧問としてハヤタがアンヌとともにパリへ行くことに。イデが「だいたいお前はあまり役立たん方だからな」と聞き捨てならない台詞を吐く。


・ハヤタが出発した途端、各地の電波に異常が生じる。科特隊にも電波障害を起こす装置が置かれていた。

・装置を分解すると数々の部品から成っていることが分かる。画面に映っているだけでも49の部品がある。

・ケリチウム磁力光波を出す装置だった。部品のひとつ、ゲルマタント鉱石は地下4万mの地底にしか存在しないという。
つまんで解説するのは福山博士。演じているのは福田善之。
第19話「悪魔はふたたび」でも福山博士として登場。
また、『ウルトラセブン』(1967)第12話「遊星より愛をこめて」(欠番)でも福田博士として出演している。


・パリに行ったはずのアンヌ隊員がアンテナのついたリモコンのようなものを持って何かをしている現場を発見。追い掛けるが逃げられてしまう。

・現場に落ちていたのはハヤタの通信機だった。

・テレビセンターを張るイデ。天井模様とBGMが印象的なカット。実相寺監督の作品にはシンメトリーや幾何学模様の背景カットがしばしば登場する。


・現れたアンヌ隊員は地底人だった。肌色のハンペンのようなものを貼って目の退化を表現。この辺のチープさがまた何ともいえない味を醸し出している。因みにこのときの髪型はストレート気味。他のシーンではウェーブが掛かっている。

・地面が盛り上がるテレスドンの登場カットは圧巻。

・「アッハハハハハハ!」高笑いする地底人のドアップが印象的だ。


・ビルとビルの間の路地から見えるテレスドン。奥へと走り去る地底人。この構図も良い。

・合成した炎が素晴らしい。火炎が丸く巻き上がって一瞬、人魂のようになる。テレスドンのスーツアクターは鈴木邦夫。

・ビートルから投下されるナパームの嵐!

・テレスドンが見えなくなる程の爆発量。あたり一帯炎の海だ。


・光と影を操る実相寺監督。絵画に出てくるような構図が素晴らしい。「キャップ~!」と駆け寄ってくるイデと合流する面々のカット。この構図はちょうどキリコの『通りの神秘と憂愁』に似ている。1914年に描かれたものであり、第一次世界大戦への不安を表したものとされている。絵画に出てくる大きな影は戦争や死の暗喩だという。芸術に造詣の深かった実相寺監督なら意図的に挿入してもおかしくない。或いは意図せず自然にこの構図になっていたか。


・仮眠マスクで眠らされ、催眠状態に置かれ、光の明滅で操られ変身させられるハヤタ。

・だがしかし、変身したら普通にウルトラマンとしてテレスドンに立ち向かうのだった。投げ技炸裂。
地底人に操られて街を壊す→科特隊の活躍で正気に返る、という展開も面白そうだが、もし提案しても周りの圧力で廃案になっただろう。


・ウルトラマンの前跳び蹴りが決まる。

・投げ技のオンパレードだ。最後は頭上に持ち上げてから投げ落とした。


・本物のアンヌ・モーハイム。目のインパクトが凄いが、化粧のせいか。もともと目が大きいのもあるのだろう。演じているのはアネット・ソンファーズ。結局、ハヤタは改めてパリへ行くことに。


 怪獣らしく大暴れするテレスドン。ナパーム弾も効かないというなかなかの強者だった。成田亨によるシンプルなデザイン、地底を掘り進みそうな尖った顔、闇夜に光る目。茶色いボディが怪しく艶やか。やはりテレスドンには夜が似合う。

 造型は高山良策。ウレタン製の表面に布を貼ることにより、皺を表現。実相寺監督はテレスドンを「オケラのような奴」と言い表したという。よく自分の担当回の怪獣を揶揄する実相寺監督だが、怪獣愛は並々ならぬものがある。スペシウムで爆散という手法を嫌い、それぞれ異なる形の最期を迎えさせている。

 科特隊の内部をあえて暗くしたり、顔をドアップで撮ったり、芸術性のあるカットを挿入したりと、光と闇を操った「独創的」な絵作りも特徴的だ。

 空の上ではなく、足元の下に敵がいると想定し、地上を火の海へと化す脚本を書いた佐々木守。高度経済成長を謳歌していた日本人に、戦火に散っていった者たちの無念を思い出させようとしたのだろうか。ナパームで地上を焼き尽くしたカットは渾身の東京大空襲再現を意図しているようにも見える。或いは、1966年当時繰り広げられていたベトナム戦争の惨状を訴えようとしていたのだろうか。

 近年では、2015年の『ウルトラマンエックス』第3話「夜を呼ぶ歌」で地底女とテレスドンが登場。テレスドンがトルネードしながら突っ込むという新たな技を披露している。また、『ウルトラマンゼット』(2020)第4話「二号ロボ起動計画」ではジラースの怪獣メダルの力を得てエリマキテレスドンとして強化改造されている。シンプルゆえに汎用性が高い地底怪獣の代表格となった。

cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

cf.)テレスドン登場の『ウルトラマンゼット』第4話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6535953.html

[参考]
DVD『ウルトラマン』©1966円谷プロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/福田善之
https://ja.wikipedia.org/wiki/アネット・ソンファーズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/テレスドン
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