小説『ウルトラマンF』(著:小林泰三 出版:ハヤカワ文庫)を読んだ。(※以下ネタバレあり)

 舞台は『ウルトラマン』(1966)の世界に設定され、ウルトラマンがハヤタと分離して地球を去ってからの後日談。

 しかし、登場する怪獣は各シリーズからチョイスされており、名場面へのオマージュ描写も多々垣間見られた。

 作者は巨大フジ隊員が大好きなようで、フジ隊員が巨大化し、ちょうど女性版ウルトラマンサーガのような最終形態にまで進化する。それをサポートしたり、科学的に説明したりするのは専らイデ隊員の役割で、まるで主人公のような活躍を見せる。原典『ウルトラマン』(1966)本編でのコメディリリーフ的な立ち位置ではなく、フジ隊員を愛するひとりの男として、アツイ部分がクローズアップされている。

 敵対勢力としては、鬱鬱と躁躁。そして科学者インペイシャントが存在するが、思うに、この3人の組み合わせ、『三酔人経綸問答』(著:中江兆民)になんとなく似ている。

 初代『ウルトラマン』を中心とした各シリーズへの愛に溢れた作者の分析力や考察力には舌を巻く。同時に、それを会話の中に上手く混ぜ、物語に説得力を持たせているところも評価できる。

 ただ、ちゃんと物語を楽しむには、『ウルトラQ』(1966)、『ウルトラマン』(1966)、『ウルトラマンA』(1972)、映画『ULTRAMAN』(2004)、『ウルトラマンネクサス』(2004)、『ウルトラマンメビウス』(2006)、劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(2006)、映画『ウルトラマンサーガ』(2012)を把握してなければならないため、ファンの読み物としてはウルトラ初心者にはオススメできない。

cf.)『ウルトラQ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6654971.html

cf.)『ウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6642931.html

cf.)『ウルトラマンエース』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5915827.html

cf.)『ウルトラマンネクサス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5869472.html

cf.)『ウルトラマンメビウス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6016964.html

[参考]
『ウルトラマンF』(著:小林泰三 出版:ハヤカワ文庫)
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