『バルタン星人を知っていますか?』(著:飯島敏宏+千束北男 出版:小学館)は飯島敏宏の生涯の中で、主に学生時代を経てディレクターとして活躍した時代を記した奮闘記である。

 インタビューなどで、常々、自身を「娯楽作家」とか「娯楽職人」と称している飯島敏宏。その所以が記されていた。

 両親の期待を裏切ることになることを知りつつ、文学部に入り、「小説家になりたい」「脚本を書きたい」とあれこれ夢を模索し、母親がお膳立てしてくれた教職に就くこともなく、民間テレビ局のアルバイトADとして、赤坂に泊まり込みで仕事をする毎日。「ウチの倅をどうするつもりですか!」と両親が会社に怒鳴り込む程、心配させてしまった。

 しかし、やっと運が巡ってきて、正真正銘のディレクター・デビュー作と称する娯楽時代劇「鳴門秘帖」を監督することとなる。初めてブラウン管に「演出 飯島敏宏」の文字がクレジットされたのだ。

 洋服店を営んでいた家族はもちろん、店の職人たちも総出で土曜夜10時放送の本作を観、大絶賛し大いに喜び、祝福してくれたという。

 このとき、「生涯、この人たちにわからない作品は作らない」と誓った。

 つまり、インテリ層向けの芸術作品を作るのではなく、大衆のために、娯楽を提供し喜んでもらうことを是とする作風を守っていこうと決めたのだ。

 風刺や暗示、社会派的メッセージを孕んでいても、それを包むのは喜劇の作風だったり、あくまで面白おかしい、あるいはワクワクさせるような作品が多いのには、こういった理由があったのだ。

 後の『ウルトラQ』(1966)、『ウルトラマン』(1966)監督回に見れらる底抜けに明るいエンターテイメント性は、決してふざけているのではなく、「大切な人たちを楽しませたい」という想いが源泉にあることを知っていると、またひとつ楽しみ方が変わってくるのである。

[参考]
『バルタン星人を知っていますか?』著:飯島敏宏+千束北男 出版:小学館
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