たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    カテゴリ:ウルトラマン > 帰ってきたウルトラマン

    引き続き「特撮のDNA」レポ。

    『帰ってきたウルトラマン』(1971)のブースより。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/6315068.html

    ・TBSの番宣ポスター。左側に「8時だョ!出発進行」「美しきチャレンジャー」「大岡越前」など有名番組が名を連ねている。なかなかインパクトのあるポスターだ。

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    ・撮影で使用されたオリジナルマスクとブレスレット。
    ブレスレットの内側にはスーツの赤い塗料が付着している。
    ブレスレットはいつか着けてみたい代物。

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    ・MATのユニフォーム。ヘルメットは南隊員用。隊員服は丘隊員用。マットシュートも撮影用オリジナル。金属製電気発火モデル。

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    ・飛行シーン用人形。

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    ・マットアロー1号の2尺モデル。撮影用オリジナルの型から製作されたレプリカ。
    マットアロー2号は1尺モデル。木製で遠景用に作られた撮影用オリジナル。

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    ・デザイン画。

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    cf.)その8はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7831422.html

    cf.)その6はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7756552.html

    [参考]
    「特撮のDNA~ウルトラマンGENEOLOGY~」©円谷プロ・特撮のDNA製作委員会
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     『帰ってきたウルトラマン』(1971)第8話「怪獣時限爆弾」はゴーストロン登場回。脚本は田口成光。監督は筧正典。特殊技術は高野宏一。

    ・ゴーストロン。スーツアクターは遠矢孝信。着ぐるみはアーストロンの改造で、劇中での言及はないが、アーストロンの弟と言われている。金を食べるという裏設定もある。声がかわいく、あぐらをかいたり、のほほんとしていてどこか憎めない怪獣。

    ・「一発でOKです」と言い放ち、揚々と出撃した郷だが、いきなり火を吹いてきたゴーストロンに虚を突かれ、ミスをしてしまう。岸田開発のX弾の時限発射ボタンの方を押してしまったのだ。

    ・隊長との柔道稽古。いつもなら負けるはずがないところを、集中力を欠き、負けてしまう郷。
    先のミスは自分の油断に原因があったと気付かされる。加藤隊長の笑顔がいい。

    ・ジャイロで近づいたときに咄嗟に火を吹いてくるゴーストロン。炎が上にホップしている。これは要注意な軌道だ。

    ・ゴーストロンは視力は20メートル程しか見えないほど退化しているが、聴力はあり、音に反応して素早い動きをすることに思い当たる郷。

    ・次郎君は友達からMATの不評を聞かされ、郷からもらった花を自ら落として花瓶を割ってしまう。

    ・手前に木を据え、奥にゴーストロンとウルトラマンを配置した絶妙なアングルだ。

    ・X弾が爆発したら大変なことになる。時計の針が刻一刻と進み、一同の脳裏に最悪の事態がよぎる緊張感。

    ・ウルトラマンはゴーストロンを宇宙へ運び、そこで爆発させた。

    ・富士山をバックにMAT一同の安堵が描かれる。


     どんな任務も「緊張感」を持って油断せずに取り組むべしという教訓ある回となった。郷の成長を喜ぶ加藤隊長の笑顔が印象的。迫りくる時間という「緊張感」もあり、二重の意味で「緊張感」がテーマとも言える回となった。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    DVD『帰ってきたウルトラマン』©1971円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴーストロン
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     『帰ってきたウルトラマン』第2話「タッコング大逆襲」はヒーローが変身不能に陥るというフォーマットを生み出した回。


    ・MATに入隊した郷。剣道では上野隊員や丘隊員を負かし、柔道では南隊員を負かし、射撃では岸田隊員を負かす。ウルトラマンの超能力を体得してしまった郷は常人の能力を超えてしまい、慢心する。

    ・タッコング出現。丸い体と小さい顔、短い手足が非常にかわいい。尻尾の形もユーモラスだ。スーツクターは遠矢孝信。デザインは池谷仙克。中に人が入っていると思わせないように意識したという。造型は安丸信行。

    ・作戦を無視し、南隊員の制止も聞かず勝手に攻撃を始めてしまう郷。

    ・作戦は失敗し、南隊員は怪我をしてしまう。

    ・「ウルトラマンになれ!」と言っても何も起こらない。

    ・責任を被ろうとする南隊員だが、郷の勝手な判断だったことがバレ、加藤隊長は郷に解雇を言い渡す。

    ・アキの洋服店に寄り、坂田自動車工場に戻る郷。しかし、坂田は郷を突き放す。

    ・人間・郷秀樹として全力を尽くさなければいけなかったことに気づき、反省する郷。

    ・タッコングが再び現れる。オイルが流れるパイプを破壊する。

    ・オイルプラントを襲う。炎に包まれる工場。『ウルトラマン』(1966)第13話「オイルSOS」を想起させる、画面が炎で埋まる程の危険な特撮。

    ・破壊された箇所から原油が漏れる描写も素晴らしい。

    ・現場作業員と南隊員を助けに奮闘する郷。立ち上る炎を上着で消そうとしていると、光が訪れ、ウルトラマンに変身。作業員たちを助けるカットがないが、そこは安全な場所に彼らを置いたシーンを想像で補うしかない。

    ・口から水流を噴射するタッコング。

    ・スペシウム光線が命中。タッコングの一か所から火花がプシューと噴き出してから爆散する。爆散前のひと工夫が嬉しい。

    ・MATに復帰できた郷。坂田も一緒に流星2号を作りたいと言ってくれた。MATがオフの日は自動車工場に来れることに。アキが差し出してくれたハンカチで涙を拭う郷。

     以降のウルトラシリーズで、人間がウルトラマンの力を借りて変身する作品においては、この慢心→変身不能→改心→変身というフォーマットがしばしば使われるようになった。

    cf.)『ウルトラマンダイナ』の変身不能回はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6682150.html

    cf.)『ウルトラマンコスモス』の変身不能回はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6751477.html

    cf.)『ウルトラマンマックス』の変身不能回はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6669311.html

    cf.)『ウルトラマンゼット』の変身不能回はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6433016.html

     タッコングは『ウルトラマンタイガ』(2019)第22話で新造形として復活している。丸っこくてかわいいフォルムなので、今後も登場が期待され、人気が上がる可能性大の怪獣だ。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    DVD『帰ってきたウルトラマン』©1971円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/帰ってきたウルトラマンの登場怪獣
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     『帰ってきたウルトラマン』(1971)第11話「毒ガス怪獣出現」。この回は金城哲夫が脚本を書いたウルトラシリーズ最後の1本だ。

     『ウルトラQ』(1966)、『ウルトラマン』(1966)、続く『ウルトラセブン』(1967)で脚本を務めた金城哲夫。脚本家でありながらプロデューサー的業務も精力的にこなして第1期ウルトラシリーズ創出に貢献した金城哲夫は、『マイティジャック』(1968)や『怪奇大作戦』(1968)の不振を受け、1969年に円谷プロを退社し、沖縄に帰郷。沖縄芝居を書いたり、ラジオやテレビ番組の司会などをしていた。


     1971年、『帰ってきたウルトラマン』の企画が進む中、プロデューサーの満田かずほが金城にオファー。「気晴らしにもなるから」と上京を促し、1本脚本を依頼した。金城は馴染みの旅館「はなぶさ」にこもって第11話「毒ガス怪獣出現」を書き上げた。


     旧日本軍が開発した毒ガス・イエローガス。山中に廃棄されていた毒ガスを食べてしまった怪獣モグネズンが毒ガスを吐きながら暴れ回る。防衛チームMATの隊員である岸田は、自身の父がその毒ガスの開発者だったことを知る。しかも、岸田の兄はそれを知って自殺していた。岸田家の因縁を背負って重苦しい表情で憑りつかれたように怪獣に挑んでいく岸田は負傷し、倒れる。ウルトラマンも毒ガスに苦しみながら闘い、MATの助けもありやっとの思いで怪獣を倒す。

     上原正三は、この脚本にはかつての金城の伸びやかさがないという。毒ガスへの恐怖や苛立ちをそのままぶつけたような作品だった。

     毒ガスを素材にしたのには理由があった。金城が沖縄に帰郷した1969年7月、アメリカ軍が沖縄に神経ガスを貯蔵していることが露見したのだ。当時、泥沼化していたベトナム戦争で実際に使用されているとの噂もあり、大騒ぎになった。

     毒ガスの問題は過去の遺物ではない。旧日本軍が中国で捨てたり埋めたりした毒ガス兵器がもとで被害を受けた者は今もおり、裁判にもなっている。現代にも尾を引く大問題なのだ。

     スペシウム光線はガスを炎上させるために放たれ、モグネズンへのトドメにはスピンキックが使われる。怪獣を爆散させないのは毒ガスの拡散を防ぐという物語上の展開も然ることながら、毒ガス問題がカタルシスでスッキリと終われない問題であることも示唆しているのではないだろうか。

     さて、敢えて穿った見方をしてみれば、岸田隊員やウルトラマンは金城哲夫自身(実際に変身するのは郷隊員だが)。岸田の父は「オヤジ」と呼ばれ1970年に逝去した円谷英二。イエローガスは資本主義、といったところだろうか。資本主義の荒波に飲まれ、身を削るようにして作品を作り出し、疲れ果ててしまった金城は、純粋に作品を楽しんで作れなくなってしまった。「特撮の神様」と呼ばれ、失敗は許されなかった円谷英二。こう考えると、2人の天才の悲しみが連想されるような回でもあるのだ。

    cf.)『帰ってきたウルトラマン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6315068.html

    [参考]
    DVD『帰ってきたウルトラマン』©1971円谷プロ
    『金城哲夫 ウルトラマン島唄』著:上原正三 出版:筑摩書房
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     1971(昭和46)年に放送された『帰ってきたウルトラマン』は当初、初代『ウルトラマン』(1966)の完全な続編として構想されていた。生前の円谷英二が「世の中いろんなもの(用心棒や座頭市など)が帰ってくるから、ウルトラマンもそろそろ帰ってこさせようか」と言ったことから企画が始まったとされている。

     円谷プロの満田かずほと田口成光によって書かれた企画書「特撮怪獣シリーズ/続・ウルトラマン」は、『ウルトラマン』から約30年後の世界に、ウルトラマンが帰ってくるという内容。科学特捜隊を引退した ムラマツやハヤタが登場し、ウルトラマンと一体化したバン・ヒデキ(晩日出輝)がベーターカプセルで変身するなど、初代『ウルトラマン』を強く意識した内容であった。しかし、当時は第一次怪獣ブームが沈静化していたため、テレビ局からはなかなか製作のGOサインが出なかった。

     そんな折、1970年に円谷英二が急逝。長男の円谷一がTBSを退社し、円谷プロ社長に就任、ウルトラマンの復活に着手することになる。円谷一は、TBSのプロデューサー・橋本洋二らと話し合いを繰り返し『帰ってきたウルトラマン』のタイトルで企画内容を再検討。主人公のバン・ヒデキが北海道のカドクラ牧場で働いているという設定だった。

     さらに、メインライター・上原正三と橋本洋二プロデューサーの間で内容が詰められ、自動車工場で働く主人公・郷秀樹、彼を取り巻く坂田兄妹の存在、防衛チームMATの設定などが考えられた。

     作家主義の橋本は「人間ドラマを重視したい」という意向で、「主人公が命懸けの努力をすることでウルトラマンへの変身が可能となり、鮮やかに事件を解決する」というストーリー展開を打ち出す。これを受け、上原正三は崇高な初代『ウルトラマン』との差別化として、当時流行していた『柔道一直線』に見られるようなスポ根路線を採り入れた。これにより、組織や戦いの中で、未熟な若者が鍛えられ成長していく様子が多く描かれた。これは後に「人間ウルトラマン」と評されることになる。

     帰ってきたウルトラマン(後年ジャックと呼ばれることになる)のデザインは当初、初代ウルトラマンが帰ってくるのため、初代と同じであったが、円谷プロ営業部が「商品化権販売の点でメリットが薄い」と指摘。当時営業課長だった末安正博の手で、ウルトラマンの赤いボディカラーに二重線を引いたラフ画をもとに着ぐるみが製作され、これを使用して撮影が開始された。しかし、「以前のウルトラマンと見た目が変わらない」という意見が多く出たため、急遽デザインを修正。新たなスーツで撮り直しとなった。マスクは開米プロとヒルマモデルクラフトが製作。初代マンのCタイプを原型とし、若干吊り目となっている。また、着脱のし易さを重視し手袋やブーツの裾が明確に露出している。

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    cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7817138.html

     ジャックの名称に関しては、1984年の映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』で「ウルトラマンジャック」の名で正式に統一されるが、それまでは「ウルトラマン2世」や「新マン」
    「帰マン」「帰りマン」などが混在していた。因みに、「ジャック」という名は、『タロウ』(1973)の企画段階で一度挙がった名前でもあるが、当時社会問題となっていたハイジャックなどを連想させる語として見送られていた。

     夕陽の中で闘う姿が印象的で、後の作品でオマージュされるときは夕陽とセットのシーンも多く、『ウルトラマンタイガ』(2019)第10話「夕映えの戦士」はその最たるものである。近年のウルトラシリーズの特撮最前線で活躍するクリエイターたちは、第2期ウルトラシリーズの1作目となったこの『帰ってきたウルトラマン』のファンが多く、今後の作品への影響も計り知れないものがある。

    cf.)前作『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html

    cf.)ウルトラマン復活の機運を高めた『ウルトラファイト』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6137165.html

    cf.)次作『ウルトラマンエース』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5915827.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    https://ja.wikipedia.org/wiki/帰ってきたウルトラマン
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