たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    カテゴリ:ウルトラマン > ウルトラマンタロウ

     引き続き「特撮のDNA」レポ。

    今回は『ウルトラマンタロウ』(1973)のブースより。

    cf.)『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/5925381.html

    ・なんともデカい手。いわゆるグングンカット用に作られた手である。

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    ・撮影用オリジナルの初期タイプマスク。

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    ・井口昭彦によるタロウのデザイン画(決定稿)。筋骨隆々とした趣がある。

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    ・ウルトラバッジ。後年、再制作されたレプリカ。六芒星の魔法陣をアレンジしたようなデザイン。黄色いカラーリングなので魔道具のような印象はないが、何かしらの意味が込められているに違いない。隊員服が青に赤いラインが走ったものなので、黄色でアクセントにしたかったのか。いずれにせよ、秀逸なデザイン。当時はトレギアの設定など存在しなかったが、魔法陣を多用するトレギアがバッジの開発に関わっていた、なんていうこじつけ・後付け設定を妄想してみるのも面白い。

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    ・ラピッドパンダとコンドル1号。どちらも撮影用オリジナル。

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    ・撮影用オリジナルの隊員服、ヘルメット、ZATガン。直線的なラインが印象的で、ラインのせいか、着用すると手足が長く見える気がする。

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    ・ウルトラの父の撮影用オリジナルマスク。前作『ウルトラマンエース』(1972)のときよりも角が若干小さく、カーブの曲線もコンパクトにまとまった感がある。

    火炎放射器も撮影用オリジナルで金属製。

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    ・ウルトラの母の撮影用オリジナルマスク。母のマスクはこの初期のものが一番良い。後に目が若干鋭く黄色くなったタイプが登場するが、柔和さが薄れてしまっている。

    タロウの少年時代(いわゆるコタロウ)のマスクは映画『ウルトラマン物語』(1984)の撮影終了後にオリジナルの型から制作されたもの。声は野沢雅子が担当していた。

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    ・井口昭彦によるデザイン画。母は決定稿。
    父は当初、青目のデザインだったことが分かる。細いウルトラアレイを持っている。

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    cf.)その10はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/8027623.html

    cf.)その8はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/7831422.html


    [参考]
    「特撮のDNA~ウルトラマンGENEOLOGY~」©円谷プロ・特撮のDNA製作委員会

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     『ウルトラマンタロウ』(1973)第34話「ウルトラ6兄弟最後の日!」はテンペラー星人とウルトラ兄弟が登場するスペシャル回の後編。脚本は前編に引き続き佐々木守。監督は真船禎。特殊技術は山本正孝。


    ・テンペラー星人を倒し、再びバーベキューに興じるウルトラ兄弟。また沖縄の花々のカットが挿入される。剣崎海岸でのロケは日帰りだったというので、前話のシーンと併せて撮影したのだろう。

    ・調子に乗るタロウに対し、セブンやマンが忠告するが聞く耳を持たない。

    ・新たなテンペラー星人が登場。特殊スペクトル光線でウルトラマンであることを見破られる光太郎。

    ・前話と同じ変身・憑依カット。ハヤタの手に注目すると、なんとベータカプセルを持っていない。実はアイテムなしで変身している。手をかざしたときに太陽の光が重なって、カプセルを持っているように見える演出となっている。

    ・チームワークを無視して個人プレイに走るタロウ。ゾフィーはタロウが態度を変えないままなら、もうタロウはウルトラ兄弟ではない、とまで言う。

    ・地上から攻めるタロウ、上空から攻めるZAT。お互いが邪魔で攻撃できない。

    ・光太郎の運転する車を追いかけているうちに目を回して倒れ、円盤内で休むテンペラー。実にコミカルだ。

    ・なんとテンペラーは蜘蛛に変身することが出来る。赤いガスでさおりを眠らせ、憑依。

    ・ウルトラマンボールを友達に貸さずに揉めている栄一を放っておく光太郎。自分と同じく、力のある者が個人プレーに走った方がいいときもあると言い放つ。

    ・テンペラー扮するさおりに捉えられ、ウルトラ兄弟必殺光線を浴びて苦しむタロウ。死の苦しみらしい。ウルトラ兄弟扮するZATに助けられる。

    ・テンペラーのデザインは鈴木儀雄が担当。当初はカブトムシとゴキブリを合わせたようなイメージで、ブルトン星人と呼ばれていた。バルタン星人とヒッポリト星人など、それまでの強敵の特徴を合わせたデザインとなっており、特に頭部や手はバルタン星人の要素が強く「貫禄の増したバルタン星人」とも呼ばれている。「怪獣軍団」を陰で操る黒幕だったとされ、「怪獣軍団のゴッドファーザー」として巨大ヤプール(改造)に改造ベムスターなどの怪獣軍団を貸し与えたとも言われている。

    ・特殊スペクトル光線で正体がバレたウルトラ兄弟、倒れていたバレーボールチームに憑依する。しかし、すぐ見破られ、ウルトラ兄弟必殺光線を浴びてしまう。

    ・テンペラー「見つけたぞ~。見つけた見つけた。」この陽気な声は丸山詠二が担当している。気の抜けてしまう声だ。この声のおかげで、ウルトラ兄弟がピンチなのに微笑ましく観ていられる。

    ・増長していたタロウは反省し、テンペラーの間合いに入るためにウルトラマンボール作戦を提案する。

    ・栄一に友達と一緒に投げるよう促し、ウルトラ兄弟と一緒に間合いに入り込むことに成功。
    と言っても変身場所は大して近くはなく、十分距離を取っていた。。。

    ・連携プレイでテンペラーの両腕をタロウカッターで切断するタロウ。

    ・テンペラーにはタロウのネオ・ストリウム光線、円盤には5兄弟の一斉光線(グランドスパーク)でそれぞれ撃破する。

    ・バレーのチームを指差し、「タロウ、忘れるな、あの元気な声をな。」と言うのはジャック。かつてMATで自分も増長し、変身不能になるという痛い経験をしたことがあるジャック。チームワークの大切さをタロウに印象づけたかったのだろう。

    ・バレーボールチームと一緒にマラソンをするZAT。なぜ一緒に走り出したのかよく分からない展開だが、5兄弟に手を振る光太郎の爽やかさがそんな疑問を吹き飛ばしてしまう。『タロウ』=爽やかさ、と言っても過言ではない。

     『タロウ』のメインライターである田口成光によると、ウルトラ6兄弟という発想を打ち出したのは、小学館の学年誌『小学二年生』の編集長であった井川浩であるという。

     当時、講談社で『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』が連載されていて人気だった頃、小学館で最初に「怪獣をやった方がいい」と言い出したのが井川浩。小学館で『帰ってきたウルトラマン』の連載が決まると、井川編集長をチーフに総勢8人体制のチームが作られた。井川浩は「出社しなくていいから円谷プロに行ってろ」とチームに指示し、一週間割り当てで円谷プロに入り浸ったという。

    cf.)第33話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6255855.html

    cf.)『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html

    [参考]
    DVD『ウルトラマンタロウ』©1973円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/テンペラー星人
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     『ウルトラマンタロウ』第33話「ウルトラの国大爆発5秒前!」はテンペラー星人とウルトラ兄弟が登場する前後編の前編。脚本は佐々木守。監督は真船禎。特殊技術は山本正孝。


    ・ウルトラ兄弟がタロウに招待されて地球に飛んでくるシーンで挿入される花々のカット。これは真船監督が1972年に沖縄で撮影したもの。「地球の平和と美しさを表現したくて」と語っている。

    ・ウルトラ兄弟がウルトラの国を留守にしていることが、動くサルの人形によって告げられる。ライティングも紫で不気味さを醸し出している。佐々木守脚本の凄みを感じる。また、サブタイトルは「ウルトラの国大爆発5秒前!」と書かれているが、ウルトラの国襲撃に関しては冒頭でしか動きがなく、しかもテンペラー星人は爆撃せずに地球へ移動する。本編はほとんど地球で展開されるため、単に大げさなサブタイトルで視聴率を稼ぎたかっただけと思われる。

    ・兄弟たちの人間態のシーン。タロウに招待されてバーベキュー大会。これだけで肩に力を入れずに観られる作品であることが分かる。宇宙パトロールのために遅れてくるゾフィーを待とうというタロウに対し、「ゾフィーのことなんかいいよ」と言うセブンが笑える。先に食べ始める兄弟たち。因みにロケ地は三浦半島の剣崎海岸。真船監督がチョイスした。真船監督は篠田三郎とは初対面だったが、素直で一生懸命やる、とってもいい役者で、とても好感を持ったと語っている。演技は黒部進や森次晃嗣がリーダーシップを執ったという。

    ・街にテンペラー星人が登場。「ウルトラ兄弟、どこだよ~」と暢気な声が街に響く。
    テンペラー出現をゾフィーが知らせに来る。タロウが海岸までおびき出すことに。走り方もコミカルで面白い。

    ・おびき出し作戦に失敗、ウルトラ兄弟のもとに戻ってくるタロウ。ゾフィーは厳しくタロウを突き返し、ひとりで行ってこいと言う。エースやジャックはタロウに年代が近いためか、すぐ助けに行こうとするが、マンやセブンはゾフィーの考えに同調し、2人を制止する。

    ・ZATの隊員たちに憑依するウルトラ兄弟。『帰ってきたウルトラマン』(1971)の憑依シーンのオマージュ。エースは上野隊員、ジャックは南原隊員、セブンは北島隊員、マンは荒垣副隊長、そしてゾフィーはゲストの大谷博士。この大谷博士を演じるのは竜崎勝(かつ)。アヤパンこと高島彩の父である。

    ・一方、行方不明のZATに対して、本部では死んだことになっていた。遺影も飾ってある。このあたりの展開も笑いを誘う。

    ・大谷博士の息子・栄一「ちっくしょー!おれひとりだってテンペラー星人を倒してやる!」
    子どもがひとりで怪獣に立ち向かおうとガッツを見せるのも昭和シリーズならでは。栄一を演じるのは西脇政敏。
    『エース』(1972)第26-27話の坂本ヒロシ役、第35話の浅倉雪夫役、
    『タロウ』第17-19話の小林タケシ役を演じている。
    同じシリーズで違う役として再登場するのは昭和シリーズではよくあること。

    ・隊員たちに憑依しているウルトラ兄弟たちは、東光太郎に正体を隠したまま、冷たく接する。
    光太郎は逆ギレしてテンペラーに立ち向かう。

    ・しかし、テンペラーは強かった。電撃ムチの猛攻に敗れるタロウ。テンペラーのデザインも恐ろしさがまったくなく、牧歌的な質感が非常に良い。

    ・栄一のウルトラマンボールに自身を縮小して入り、栄一に投げてもらい、一瞬のうちに間合いに入り込むタロウ。さながら桃太郎だ。

    ・そのままテンペラーの中に入り込み、内部から爆発させる。ウルトラ兄弟たちに胴上げされるタロウ。シュールな絵作り。そんなに体が上がっておらず安全志向のところがまたたまらなく面白い。


     真船監督は、『タロウ』をホームドラマであると語る。ウルトラマンたちをファミリー化し、人間のように描く流れとなったのは社会的な価値観の変化があったからだと推測する。1970年安保闘争、1971年浅間山荘事件、1972年沖縄返還・・・。それまでは物の考え方がシリアスで、人間対社会、個人対組織、という厳しい対立が続いていたが、1973年頃になると、革命も闘争も無意味であるという虚無感が時代を覆う。ある種の絶望感の中で、発想が社会から家族へシフトしていき、小市民的な生活で幸せになりたいと考えるようになった。その流れでウルトラシリーズも『タロウ』で完全な家族主義が導入されるようになったのではないか、という。

    こう考えると、真船監督が冒頭で花々のカットを入れた意味も分かる気がする。

     因みに、タロウの名前の原案はウルトラタロウ。当初は「ジャック」や「ジョー」が考えられていたが、小学館編集部の福島征英が子ども向け情報誌『よいこ』の編集に携わっていた頃、アルバイトの女の子に「何かないかな」と訊いたところ、「男の子だったらタロウよね」と言い、リストの中に「ウルトラタロウ」が加わった。後に正式に円谷プロの満田かずほが「ウルトラマンタロウ」と命名することになる。この女の子がいなかったら、タロウは他の名前だったかもしれない。

    cf.)続く第34話はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6262187.html

    cf.)『ウルトラマンタロウ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5925381.html

    [参考]
    DVD『ウルトラマンタロウ』©1973円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/竜崎勝
    https://ja.wikipedia.org/wiki/西脇政敏
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     1973(昭和48)年に放送された『ウルトラマンタロウ』。今なお絶大な人気を誇り、昨年(2019年)は息子の『タイガ』が登場するなど、第二期ウルトラシリーズの中でも随一の知名度を保持している。


     1973年は円谷プロ創立10周年。初の劇場用作品となる『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』をはじめ、『ファイヤーマン』(日本テレビ系)、『ジャンボーグA』(テレビ朝日(当時はNET)系)といった新作TVシリーズを製作、CMやTVドラマの制作も多数手掛けていた。そんな中、真打ちとして『タロウ』が製作されることになった。


     当初は「ウルトラジャック」というタイトルで企画され、ウルトラ兄弟設定を引き継いで「ウルトラ6番目の弟の物語」ということが決まっていた。また、宇宙怪獣の来襲やメカニック、エンターテインメントの充実もアピールポイントになっていた。


     2番目の企画書は「ウルトラマンスター」。キャスティングやメカニックが具体的に記された。そして3番目の企画書では「ウルトラマンジャック」とされ、「トランプのジャックに因み、11の強力な武器を持つウルトラマン」とされた。


     しかし、当時社会問題となっていたハイジャック事件(1970年よど号ハイジャック事件が有名)を想起させるネーミングだったため、却下となり、新たなネーミングが検討された。当時の円谷皐社長から「日本的な響きを持つ言葉にも目を向けてみたらどうか」という意見が出され、「ジャック」が西洋のおとぎ話によく出る名前であることから、日本の昔話によく出る「太郎」という名前が採用された。


     当時は和名の家電製品が流行していた時代でもあり、洋風の名前のヒーローが多い中で、和風の名前はかえって新鮮であるとされた。


     タロウのデザインは、前作『ウルトラマンエース』で特撮美術を担当した井口昭彦。歴代ウルトラマンの中で人気の高かったセブンのルックスに、ウルトラの父の角を加え、カラータイマーをつける、というアイデアでデザインされた。胸のプロテクターを肩で切れ上がった形状にすることで、腕の自由度を増し、ボディラインがより精悍に見えるようにするなどの改良も施されている。なお、デザイン画の段階では耳の後ろから後頭部にかけて段差が存在しているが、実際のスーツでは省かれている。

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    cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/8019039.html

     開米プロの依頼を受けてマスク原型の造型を担当したのは照井栄。照井は「頭が大きいので170cm以上あるスーツアクターを起用してほしい」と熊谷健プロデューサーに打診。『ファイヤーマン』に扮していた西条満が同じ事務所で長身の長沢寛を推薦した。西条も一部の激しいアクションシーンでタロウに扮している。

    cf.)前作『ウルトラマンエース』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5915827.html

    cf.)次作『ウルトラマンレオ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5936832.html


    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    DVD『ウルトラマンタロウ』©1973円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンタロウ

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