たかの特撮ブログ

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ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    カテゴリ:ウルトラマン > ウルトラマンゼロ


      2009(平成21)年12月に公開された映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』は革命的な作品となった。

     企画が立ち上がったのは『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(2008)の公開を控えた2008年8月。『大怪獣バトルNEO』の製作統括を担当していた岡部淳也代表取締役副社長(当時)が企画書・ストーリー原案・基本構成を提案。プロデューサー・ビジュアルスーパーバイザー・脚本も兼任した。

    cf.)『大決戦!超ウルトラ8兄弟』についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6077618.html

     企画段階でウルトラ戦士の故郷である「光の国」のCG映像化、セブンの息子・ゼロと悪の戦士・ベリアルの戦い、光の国の壊滅、という基本的なストーリーは決まっていた。作品の配給は、従来の松竹からワーナー・ブラザーズに変更。これは、海外展開を強く意識していたためであり、音楽担当のマイケル・バータなど、ハリウッドのスタッフも参加している。

     監督は、アメリカやニュージーランドで活躍していた坂本浩一。「従来のウルトラシリーズでは存在しなかった、新たなアクションや演出を盛り込みたい」という考えのもと、構想が練られていった。当時、『パワーレンジャー・RPM』の撮影でニュージーランドにいた坂本監督。岡部淳也はニュージーランドに出向き、打ち合わせを始めた。その後、撮影が終わるまではファクスで絵コンテを日本に送ったり、スカイプで打ち合わせをするなどして、坂本監督はニュージーランドにいながら準備を進めていったそうだ。

     岡部淳也は、打ち合わせに東映映画『マジンガーZ対暗黒大将軍』(1974)の資料を持参し、物語の終盤でグレートマジンガーが電撃的に登場することを参考に、新戦士・ゼロの登場の演出を提案。同年代である坂本監督と嗜好が合っていたという。

     また、坂本監督は内山まもる作の漫画『ザ・ウルトラマン』に見られるように、ウルトラ兄弟がマントを羽織るアイデアなどを提案し、これも採用された。『スター・ウォーズ』的なスペース・オペラも意識し、ミライ・ハヤタ・ダンの衣装にもその片鱗が窺える。メビウス・レイ・ゼロの活躍のバランスについては、『マジンガーZ対デビルマン』(1973)を参考にした。

     因みに、当初台本ではレオの登場はなかったが、師匠の息子を弟子が育てるというカンフー映画の王道を実現すべく、坂本監督の強い要望でレオ・アストラ兄弟の登場が決定。漫画『巨人の星』(1966)に出てくる大リーグボール養成ギブスを参考にしたテクターギア・ゼロを鍛える役割を与えた。

     「光の国」の映像化に際し、過去のM78星雲出身のウルトラ戦士たちも登場。また、若い頃のウルトラの父と母、ゾフィーが登場し、父と母はそれぞれ「ケン」「マリー」という名前であることも新たに設定された。声優陣も豪華で、ウルトラマンキングは元内閣総理大臣の小泉純一郎が声を当てている(一度は断ったものの、息子の孝太郎がタロウファンで、出演を勧めた)。また、撮影中に『コスモス』(2001)で主人公を演じた杉浦太陽から熱烈な出演希望オファーがあり、急遽新たな役を作って撮影が追加された。

     アクションに関しては、ワイヤーアクションを多用。当時の日本ではまだワイヤーアクションは主流ではなく、経験のあるアクション部も少なかった。そこで、実績のあるアルファスタントのパワーレンジャーチームがメインのウルトラマンたちを演じ、円谷プロのアクション部であるキャスタッフはサポートに回った。

     ウルトラマンゼロのデザインは後藤正行が担当。当初は「ウルトラセブンアックス」の名で呼ばれていた。セブンの息子という設定から、セブンのデザインをアレンジしたが、作業は難航を極め、ダブルアイスラッガー(ゼロスラッガー)に到達するまで時間が掛かったという。基本決定稿デザインの段階では全身赤を基調としており、カラータイマーもなく、ダブルアイスラッガーを合体して弓矢にして戦う設定などがあった。また、目は現在の形状よりも鋭く、岡部淳也から「そこまでいくとウルトラマンの顔に見えない」と言われる程だったという。坂本監督の中では漫画『あしたのジョー』(1968)の矢吹丈や漫画『デビルマン』(1972)の不動明といった、不良的要素を持つキャラクターイメージだった。

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     ベリアルのデザインも後藤正行が担当。ウルトラ戦士の面影を残しつつ、悪役であることが一目で分かるように、と意識された。二股に分かれた鋭い目、巨大なカギ爪、禍々しい赤と黒の体色、アメコミのスーパーヴィラン(悪役)を思わせる筋肉質のフォルム、といった冒険的なデザインとなった。後藤正行は後に「この目の形が出来たとき、これならイケるんじゃないかな、と思いましたね」と述懐している。

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     因みに、レイブラッド星人が憑依する前のアーリースタイルのスーツは造型班主導でウルトラマンゼアスのスーツを改造して作られたもので、後藤正行はデザインには関わっていない。坂本監督の中では、ベリアルは漫画『ザ・ウルトラマン』のジャッカルのキャラクターイメージだった。



     ウルトラの歴史に新しい風をもたらした革命的作品となった本作は、大好評となり、これを機にゼロとベリアルの因縁の対決が始まることになる。

    cf.)「特撮のDNA」での展示はこちら→http://tokusatsu-ultra.xyz/archives/8214819.html

    cf.)『ウルトラセブン』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6375058.html

    cf.)『ウルトラマンレオ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/5936832.html

    cf.)次作映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6117436.html

    [参考]
    『ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE』DeAGOSTINI.編©TSUBURAYA PRODUCTIONS
    https://ja.wikipedia.org/wiki/大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE
    『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
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     宇宙ミュージアムTeNQレポ。

    東京ドームシティの黄色いビル6Fで開催中の宇宙ミュージアムを見学した。「はじまりの部屋」と「シアター宙(ソラ)」での映像美を体験した後、火星の映像なども見られる「サイエンス」展示、そして最後に「イマジネーション」の展示内にある企画展「ウルトラマンゼロ10年の軌跡」を堪能した。

    まずはゼロの立像がお出迎え。

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    壁一面を使ったゼロのスペースチャート、
    声優さんのサイン、
    台本、
    衣装や小道具、

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    ノアとの邂逅の展示、

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    そして、
    東京大学ビッグバン宇宙国際研究センターの鎌田耕平監修によるマルチバースの説明文も書いてあり、たった2部屋程度の展示ではあるが、見応えのある内容だった。宇宙ミュージアムの映像美に、ちょうどゼロが見たかもしれない地球の俯瞰が含まれていたりするところも、この企画の狙いなのかもしれない。

    cf.)『ウルトラマンゼロ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6085844.html

    [参考]
    TeNQ企画展『ウルトラマンゼロ 10年の軌跡』株式会社東京ドーム
    ©円谷プロ

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