たかの特撮ブログ

特撮ブログです。
ウルトラシリーズを軸に
特撮関連の記事を書いています。

    カテゴリ:ウルトラマン > ウルトラマンエックス

     『ウルトラマンエックス』(2015)第13話「勝利への剣」は前作『ギンガS』(2014)のメンバーが登場するスペシャル客演回。脚本は三好昭央。監督は坂本浩一。

    ・脚本の三好昭央は前作『ギンガS』でも第3話「孤高の戦士」第10話「未来への聖剣」を担当しており、ショウには思い入れがあった。今回抜擢されたのはそれもあるのだろう。ショウが成長し、いい意味で丸くなったところを見せたかったと語っている。

    ・アバンに前12話の未公開シーン、屋上で大地とエックスが話す件が入っている。

    ・ビクトリーを連れ去るモルド・スペクター。
    スーツは『ウルトラファイトビクトリー』(2015)に出て来たジュダ・スペクターの流用。頭部は新規造型で、体はジュダ・スペクターの改造。「痛快!痛快!」というモルド・スペクターの台詞は原典『アンドロメロス』でもよく使われていた口癖で、脚本の三好昭央が好んで意識的に入れており、続く第14話でも脚本の林壮太郎が使っている。
    ビクトリーも黒を基調としたウルトラマンなので、黒対黒の戦いとなり、絵としても引き締まった絵になった。

    ・『エックス』の世界に迷い込んできたアリサを受け入れるXioの面々。少し会話しただけですぐ信用して仲良くなるあたりはウルトラマンの世界の明るさ、もしくは坂本監督の明るさが反映された結果なのかもしれない。アスナ役の坂ノ上茜とアリサ役の滝裕可里は撮影中も仲良しで、滝裕可里のクランクアップのときは2人で抱き合って泣いた。

    ・ショウはモルド・スペクターによって猿ぐつわをはめられた状態で登場。『ウルトラマンレオ』(1974)第34話「ウルトラ兄弟永遠の誓い」でジャックがアシュランによって猿ぐつわをはめられたときのオマージュ。「私は、地球、人です」と2回説明する大地の描写もコミカル。

    ・アスナ、アリサ、ギナ・スペクターによる三つ巴戦。動ける女優が揃ったので坂本監督がぜひやりたかったというアクション。

    ・ショウが大地の剣技を特訓するシーン。セブンがレオを特訓し、レオがゼロを特訓し、ゼロがギンガ・ビクトリーを特訓・・・と脈々と受け継がれてきたスポ根設定を踏襲。撮影中、打ち合いが激しすぎてショウの木刀が折れるというアクシデントもあった。ショウが筋骨隆々なので大地の細さが際立って見える。

    ・ビクトリーを初めて見たエックスの2度見リアクション。「かっこいい・・・」という台詞は脚本の三好昭央の狙いだが、2度見させたのは坂本監督。

    ・エックスとビクトリーの同時パワーアップカット。ビクトリーナイトはオープンカットが非常に映える。

    ・最後に登場するギンガ。「シャォラ!」という台詞は脚本の三好昭央がこだわった台詞。何度も台本を書き直して台詞を削る中、ここだけは残したかったという。因みに、ギンガの掛け声は全て時間に関係している。「シャォラ」は「将来」の訛りである。

    スポ根の伝統が受け継がれた回だったが、大地が今後ルーキーに対し修行をつけることはあるのだろうか。師匠というガラではないキャラではあるが。

    cf.)続く第14話「光る大空、繋がる大地」についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6216650.html

    cf.)前話(第12話「虹の行く先」)についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6207734.html

    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    [参考]
    Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
    『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
    You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #120
    https://www.youtube.com/watch?v=rMqNGsVkYA4
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     『ウルトラマンエックス』(2015)第12話「虹の行く先」はエクシードエックスの登場回。また、後のエピソードに繋がるギナ・スペクターやダークサンダーエナジーも登場する要素の多い重要回でもある。脚本は内田裕基。監督は坂本浩一。

    ・坂本監督はこの年、韓国での仕事がメインだったので、『エックス』にはフルで参加できない状態だった。そこで、プロデューサーの岡崎聖の依頼により、新ビークルやパワーアップ形態回、ゼロやギンガ客演回のみの参加となった。

    ・当初は「虹の大地」というサブタイトルだったが、脚本の内田裕基は違和感を感じ、第3稿くらいでこっそり「虹の行く先」に変えたらそのままOKが出たという。デビュー作だったため、自分の考えたサブタイトルとなって嬉しかったと語っている。

    ・本来、どうしてエクスラッガーが出てくるのかをドラマで描くのがセオリーだが、他にも要素が多く、とてもそんな余裕がないので、そこが目立たないように密度と勢いのある話にしようと坂本監督が先導。実際、本当に勢いのある回となった。

    ・ギナ・スペクター登場。演じているのはアクション女優の佃井皆美。
    安室奈美恵に憧れてダンスなどを始めたが、歌唱力がないことに気づき、アクションクラブ・JAEへ入った。しかし、練習は死ぬほど辛かったという。坂本監督作品にはよく登場している。『仮面ライダー鎧武』(2013)で仮面ライダーマリカ / 湊耀子役として、変身前と変身後のスーツアクターの両方を演じたこと等でも有名。
    アスナ役の坂ノ上茜も新体操出身でアクションを得意とするので、女同士の戦いを撮りたかったという。

    ・脚本の内田裕基はルイに「コスプレのお姉さん」と表現させている。このあたりの感覚も若い内田裕基ならでは。ルイとは年齢も近いので、書きやすかったという。因みに、ギナ・スペクターの衣装は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(2008)に出てくるペダン星人ハーランのものの改造。

    ・サイバーゴモラに力を貸してほしいと頼むアスナ。後の第19話「共に生きる」でゴモラに訴えかけるシーンにも繋がる伏線として、この回からアスナとゴモラの絆も描かれ始める。

    ・ザラガス対サイバーゴモラ。坂本監督はザラガス好きのため、登場怪獣として選んだ。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009)でもザラガスとゴモラを戦わせており、今回はそのセルフオマージュである。

    ・エクスラッガーを見つけてエックスを取り戻した大地。「前より大地を近くに感じる」という台詞や、「お前を離さない!」という台詞は、ともすれば変な意味に捉えられかねないが、それまでの大地とエックスの絆の総決算的な回なので敢えて言わせている。ユナイトは人間同士の話ではなく、心が繋がることでもあり、エックスを一度失った大地の喪失感は相当のものだったろうと推察しての台詞である。

    ・エクシードエックス登場。デザインを担当した後藤正行によると、相当の難産だったという。バンダイから提示されたイメージイラストは全身が虹色に光っている感じのデザインだったが、現実的には無理で、エフェクトを絶えず入れるわけにもいかないため、エクスラッガーも含めてデザインでなんとかまとめなければならない。「圧倒的に光る」というコンセプトのエクスラッガーをエクシードエックスの意匠へ落とし込めた後も、全体の色で苦労したという。

    ・ルイの「めっちゃデコってるよ~!」という台詞は内田裕基のアイディア。新ヒーローが出てきたらリアクションするのが坂本監督あるあるで、ここでも若い感覚が冴えている。内田裕基によると「怒られるかな」と思ったが、すんなり通ったという。

    ・ツルギデマーガのデザインは三ノ輪さりとが担当。坂本監督と品田冬樹の意見をデザインとしてまとめた。パワーアップ前のエックスでは少ししか投げられていないが、エクシードエックスになってからは宙空に大きく飛ぶほど投げられており、このあたりでもレベルアップが表現されている。ふっとぶツルギデマーガはワイヤーアクションである。

    ・エクシードエクスラッシュ。この技は邪気退散的な効果のみに留められた。その理由はエックス自身がカッコいいデザインで、ザナディウム光線も素晴らしい技なので、後半戦に出なくなるのは勿体ないと坂本監督が感じたため。また、従来のウルトラマンとの差別化でもある。

    ・また、商戦を意識して、大地が持つエクスラッガーの大きさも玩具版と同じサイズになっている。なるべく画面にアイテムが露出するよう、インナースペースでの操作カットも意識的に採り入れられている。この辺りは坂本監督が円谷プロに吹き込んだ良い風潮であると言える。

    ・大地に抱きつくアスナ。この大胆な展開もこの回の驚きポイントのひとつだ。
    近年の円谷プロとしては、あまりベタベタした恋愛表現は好まず、淡い恋心程度に留めるパターンが多いが、坂本監督はどちらかといえば色恋沙汰に肯定派なのではないか。内田裕基の若い感覚もそれに乗っかった節がある。

    内容がてんこ盛りで大変な回だが、勢いがあり、エクシードエックスの華々しい登場回となった。こんな回を若い内田裕基は(坂本監督のフォローがあったとしても)よくやり遂げたなという印象である。因みに、打ち合わせの際、坂本監督は朝からレッドブルを飲んで気合いを入れていたという。

    cf.)続く第13話「勝利への剣」についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6208999.html

    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    [参考]
    Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
    『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
    https://ja.wikipedia.org/wiki/佃井皆美
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     『ウルトラマンエックス』(2015)第19話「共に生きる」もアベユーイチ監督入魂の1話だ。
    「怪獣との共存」というシリーズのテーマに深く切り込んだ1話。アスナ役を演じた坂ノ上茜の演技も見逃せない。

     脚本は三浦有為子が担当。小林弘利が出していたM1号が人間を諭す内容のプロットを参考にした。

    ・M1号の目は『ウルトラQ』当時はスーツアクターの目がそのまま映っていたが、今回は円らな黒目をはめ、中に地球を映すカットもできた。

    ・オープンカットを繋げた印象的なエックス登場シーン。逆さまに落ちてきて着地する。

    ・相手がゴモラなので、後ろにかぶさり手を振り上げるが、本気の拳で叩けず、力ない平手になっているカット。大地とエックスの心情が伝わってくる。

    ・合成量を減らすために机の上のフラスコにエックスを入れるというアイデア。結果的に面白い構図の絵になった。

    ・炎バックのEXゴモラ。荒々しく凶暴さが表現されていてカッコいい。

    ・ゴモラが地面を叩き、衝撃でふっとぶアスナ。アスナは吹き替え。ワイヤーを使っているため、かなりのふっとび具合だ。

    ・アスナの台詞は最初はもっとあっさりだったが、アベ監督が「もっとクサくてもいいんじゃないの」とオーダーし、感情移入しやすい激情台詞となった。

    ・通常体に戻って正気に返り、「自分を撃ってくれ」と言わんばかりに両手を広げるゴモラ。冒頭の実験でも両手を広げており、繋がっている。心苦しくも撃つ決意をし、「ザナディウム・・・光線!」と叫ぶ大地。涙なしでは見られない名シーンとなった。

    ・M1号の声にはアベ監督がこだわり、キャスティングを依頼している。「私はカモメ」の台詞のくだりで、「私は・・・」はアベ監督が付け足した部分だが、「・・・」には「地球の代弁者」というワードが入る想定だった。一緒に浮遊している残骸は「いなずま号」の残骸だろうか。

    ・シリーズの肝になる話なので、ノイローゼになるほど悩み、プレッシャーがあったというアベ監督。アスナの演技に懸かっているため、坂ノ上茜を事前に呼び出して、アスナの演技の重要さを話したらしい。坂ノ上もそれに全身全霊で応え、涙とともに気持ちの入った素晴らしい演技を見せてくれた。


    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    [参考]
    You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #129 緊急SP
    https://www.youtube.com/watch?v=D-Z77SNLxUY
    Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
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     『ウルトラマンエックス』(2015)では様々な平成ウルトラマンが客演したが、今回はウルトラマンネクサスが客演する第20話「絆-Unite-」についてのあれこれ。

    ・ネクサス客演回があるのは元々決まっていた。そのために当時メイン監督だった阿部監督が呼ばれた部分もある。小林弘利のプロットが良かったので、ほぼそのまま使ったそうだ。

    ・脚本会議で既に阿部監督の中では「ネクサスになるのは橘副隊長」と決まっていたが、敢えて自分からは言わず、「橘副隊長で」の言葉が出てくるのを待ったという。

    ・かおるの意識をどうやって戻すことにするかについて議論があった。心臓マッサージまでさせる話もあったが、子役だし、心臓マッサージの演技は難しく、下手をすれば嘘っぽくなってしまうため、息はしている設定にし、回復体位にさせるに留めた。

    ・釣り堀で撮影。飛んでくる魚は現場にいた田口監督も1尾投げている。

    ・「あきらめるな!」の声を加工して光の効果音にしている。一度出来た音を阿部監督が聞いたとき、分かる人には分かってしまいそうな音だったので、聞いても全然分からないくらい加工させた。分かってしまうと、ラストでの橘の台詞が霞んでしまうから。


    ・岡崎聖プロデューサーが川久保拓司の起用を言い出し、友情出演が実現した。川久保本人は嬉しい気持ちもありながら、相当のプレッシャーだったという。

    ・川久保が演じた、カナダにいた橘祥吾は現地で医者をやっている、という裏設定があった。

    ・振り向くネクサスと見つめあう橘祥吾。このときの振り向きは、『ネクサス』第1話の振り向きをちょうど反転させた同じ角度での振り向きを意識させた。当初はカットバックを3回くらい入れる予定だったが、減らしたらしい。阿部監督によると「川久保君にネクサスと会わせてあげたかった」という。因みに、『ネクサス』最終回のエピローグでリコと一緒にいる孤門を撮ったのも、リコと会わせてあげたかった」から。

    ・ネクサスの声は新録。橘副隊長が変身するので、ネクサスの声は「そこまで男らしい拳のききすぎた声は避けて」と阿部監督がオーダーした。


    ・バグバズンの登場カット。車2台持たせてビルの裏側に待機させ、立ち上がると同時に上に放り投げさせた。阿部監督が「カメラ前のビルに落ちてきたらいいな」とつぶやいてから本番撮影したら本当にカメラ前のビルで車が弾み、良い絵が撮れた。「奇跡のカット」となった。写真右下の車がそれ。

    ・ネクサスのぐんぐんカットは新撮。ぐんぐん人形は当時のものが残っていたので、それを使った。

    ・バグバズンは当時のスーツを補修したもの。背中にある角はアラクネアの角を移植した。バグバズンが乗るビルは、乗っても大丈夫なよう、このために補強した。


    ・小西貴雄が『ネクサス』最終回の曲を新録したものを使用している。

    ・当初はメタ・フィールドを張る予定は台本にはなかったが、阿部監督が「ネクサスならここでメタ・フィールドを張るだろう」と思い、台本に手書きで書き加えたところ、スタッフたちの熱意で実現した。


    ・エックスが謎の連続光弾を発射するカット。当初は一発だったが、バグバズンのリアクションの間が長かったから、編集で光弾を多数発射していることにした。

    ・絵コンテ段階ではバグバズンにエクシードエクスラッシュを使う予定だったが、ビーストの性質上、ダークサンダーエナジーを払う必要がない、ということで使わないことにした。


    ・ロケ地は新宿。『ネクサス』最終回で孤門が変身した歩道の、道路を挟んで反対側の歩道で撮影した。『ネクサス』最終回でクロムチェスターが飛んで行った先の空間を見つめる橘と大地。


    ・最初のネクサス登場後、大地が机に戻ってきてエックスと会話「あのウルトラマンが誰だか知らない?」「私もすべてのウルトラマンを知っているわけではない。地球は宇宙の要石のポイントにある。それを守るのが私の任務だ」というやりとりがあるが、尺の都合でカットし、エンディングで僅かに映っている。

    ・橘が隊長の机の上にエボルトラスターも一緒に置く→ルイルイがそれを手に取り変身しようとかざすが何も起きない→グルマン博士が手に取りかざすが何も起きないので「こういうのは選ばれた人間しか駄目なんだ」と言いながら橘に返す。という幻のシーンがあったが、尺の都合上あえなくカット。こちらもグルマンのカットだけエンディングで僅かに映っている。ルイルイの方はお蔵入り。


    ・・・オマージュを挙げればまだまだ色々あって切りがない。
    こだわりにこだわり抜いた阿部監督入魂の1話。因みに、この頃はカタカナでいつもクレジットされており、第19話の「共に生きる」でも「アベユーイチ」とクレジットされているが、『ネクサス』の頃は「阿部雄一」とクレジットしていたため、今回の第20話も特別に「阿部雄一」でクレジットしている。


    cf.)『ウルトラマンエックス』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6227759.html

    [参考]
    You Tube 特爆!チャンネル 特撮は爆発だ! #129 緊急SP
    https://www.youtube.com/watch?v=D-Z77SNLxUY
    Blu-ray『ウルトラマンエックス』©2015円谷プロ
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