2017年に放送された『ウルトラマンジード』はウルトラマンベリアルの息子・ジード(朝倉リク)を主人公とし、ベリアルの最期まで描かれた物語。
プロデューサーの鶴田幸伸は小説家・乙一にシリーズ構成を要請。乙一の息子がウルトラシリーズにハマっていたことから、オファーが受け入れられた。
企画当初の仮題は『ウルトラマンゴオ』。防衛隊が登場しないことは決まっていたため、怪獣の情報を収集するグループとして、大学の研究室やサークルの登場が想定されていたが、子どもが憧れる設定にするために秘密基地を拠点とする案が採用された。登場人物の名前はSF作家の名前の捩りが多い。
メイン監督は坂本浩一。自身が手掛けたゼロとベリアルの初登場作品『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009)から始まった因縁の対決。そのベリアルの最期を自身の手で締めくくることとなり、運命的なものを感じたという。また、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(2010)でナオを演じた濱田龍臣が主人公・朝倉リクに抜擢された。
前作『オーブ』(2016)に引き続き、この『ジード』でも2人のウルトラマンの力を借りることで変身(フュージョンライズ)する設定となっており、『オーブ』では使われなかったウルトラの父やウルトラマンキングの力も使われている。また、それまでゼロが単発で客演することはあったが、テレビシリーズにレギュラーとして参加するのは初となるため、ゼロの物語でもある。
作品の根底に「父殺し」という暗い設定があるので、明るいテイストの作品づくりが目指された。主人公・リクをポジティブな性格にし、その性格を引き立てるため、相棒のペガッサ星人・ペガには後ろ向きな言動をさせている。また、『ウルトラセブン』(1967)50周年の年でもあったため、登場する宇宙人は『セブン』から選ばれた。
ジードのデザインは後藤正行が担当。最初はベリアル要素が強すぎると、ヒーローとして成立しないのではないかと不安だったが、思い切ってベリアル要素を入れ、初代ウルトラマンタイプの基本デザインに禍々しい特徴を組み込んだという。ベリアルと似て非なる存在であることを示すため、目の割れ目の方向を逆さにし、色を青とした。牙のように見える口にも拘ったという。ファイトスタイルも荒々しさが追究された。
坂本監督は当初、ベリアルとの決着はゼロが付けるべきでは、という想いもあった。しかし、小山ゆうのボクシング漫画『がんばれ元気』(1976)を参考に、シリーズ全体を通してジードの成長を説得力ある形で描き、ジードが世代を超えてベリアルに引導を渡す、という決着へ上手く導いた。
商戦も好調で、「1年に1作と映画1本」というニュージェネレーションの流れを続く『R/B』(2018)へと引き継ぐこととなる。
cf.)前作『ウルトラマンオーブ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6231535.html
cf.)次作『ウルトラマンR/B』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6244727.html
[参考]
Blu-ray『ウルトラマンジード』©2017円谷プロ
『映画監督 坂本浩一 全仕事』著:坂本浩一 出版:KANZEN
https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンジード
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