たかの特撮ブログ

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ウルトラシリーズを軸に
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    カテゴリ:ウルトラマン > ウルトラマンR/B

     『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』(2019)はウルトラウーマングリージョやウルトラマングルーブが登場する『R/B』(2018)完結編。脚本は中野貴雄。監督は武居正能。VFX監督は神谷誠。順不同で見どころポイントを紹介したい。

    ・河原でイサミの留学について話をするカツミ。河原に来るとコーチのように見えるカツミ。イサミは面と向かってカツミに「ありがとう」を言う。TVシリーズでは面と向かって言うことがなかっただけに、成長を感じる。

    ・何を探してんだよとの問いに、「影です」と答えたリクに対し、「何をポエマーみたいなことを言ってんだ!」とツッコミを入れるウシオ。

    ・戸井の部屋の前で夢の話をするカツミ。「夢には足が生えており、一歩一歩進む」。良い言葉だ。第4話に登場した熊城監督からの受け売りだろうか。

    ・TVシリーズでは「すき焼き」の話は出て来たが、映像化はされていなかった。劇場版で遂に実現。「肉ばっかり食うな」のくだりがどうしてもやりたかったという武居監督。一家団欒を羨ましそうに眺めつつ、控えめに白滝を食べるリクがいじらしい。ミオがすき焼きにコーラを入れる未公開シーンも存在する。コクが増すらしい。

    ・リクとアサヒが自分の出自について語るシーン。家族について重い悩みを抱える2人。アサヒは初めて他人にカミングアウトすることになる。リクの「授業参観に来てほしいタイプの親じゃなかった」という台詞や、リクが家族になってくれたら「ハッピーハッピッピー」というアサヒの台詞はカットされている。

    ・戸井の由来はトレギアのTOY(おもちゃ)のように扱われることから。また、後付けで、カツミへの「問い」という意もある。「怪獣だって生命だろーが!」という台詞はこの映画の中では解決できない程、ウルトラマンにとって大きな命題。シリーズを通して取り組むようなことなので、伏線として回収できないなら、この台詞は入れるべきではなかったのではないか。

    ・手に関する演技。第1話でカツミがイサミに手を差し伸べたのを受けて、今回はイサミがカツミに手を差し伸べて助ける。

    ・ルーブタッチの最後がはたいて流すのではなく、今回はがっしり握る演出が熱い。

    ・ジードとグルーブのタッチもルーブタッチに拳タッチが織り交ぜられている。ジードでは拳タッチが象徴的に扱われていたため、この演出もエモい。

    ・「君のたったひとりのお母さんだろ!」と戸井に投げ掛けるリク。母親を持たないリクだけに、この台詞はリクの感情がひと際強く表れている。

    ・逆さまになるロッソ。冒頭にインパクトのある絵が欲しかった武居監督。このシーンのために特別に作ったビルに、ワイヤーで吊ったロッソを入れ、操演部が足の動きなども操作している。

    ・スプラッシュボム、ストームシューティング、ストライクブースト。全て「ス」で始まる技。

    ・メカゴモラをあっさり倒すロッソだが、本当はスラッガーを出す前に肉弾戦があった。尺の都合でカットされている。

    ・グリージョ誕生。サナギが割れて蝶が出てくるイメージ。光も蝶の羽のように左右に広がっている。

    ・グリージョチアチャージはアサヒがよく配っている飴ちゃんのイメージだ。

    ・グリージョバリア。スネークダークネスとトレギアのダブル攻撃を簡単に防いでしまった。強い。

    ・ジードとグルーブが並び立ったときに、違和感が最小限に抑えられている。全身CGのグルーブ。VFX監督の神谷誠が手間を掛けた傑作。スーツの皺も再現されている。実際のスーツも作られ、実写用スーツで撮った素材と、半分グレー・半分ミラーのボールを使って光の反射を計測、カラーチャート、HDR写真も参照しながら、グルーブを作り上げていった。肩幅の広い逆三角形の上半身や筋肉描写が素晴らしい。神谷監督は、今後の円谷プロのひとつの可能性として、全身CGウルトラマンを提案したという。

    ・トレギアのビームを左手一本で受け止めるグルーブ。実写の車との合成も良い。

    ・グルーブのパンチカットがカッコよすぎる。インパクトの瞬間、トレギアの顔が歪むのも良い。

    ・ビル破壊とCGウルトラマンの融合も試みられた。グリーンバックで置かれた石膏ビルをグリーンの丸太を振り子のように振って破壊した素材、上からのアングルも用意、ビル4連続破壊、そこからのCG合成作業・・・など、手間が掛かっているカット。

    ・ニュースキャスター役は『平成ウルトラセブン』でサトミ隊員を演じた鵜川薫。
    官房長官役はウルトラシリーズ常連の野口雅弘。

    ・強化ガラスの破壊。最初は思うように上手く割れず、予備の1枚で再度チャレンジし、上手く吹き飛んだ。映画ならではの予算の掛かったチャレンジカット。

    ・トレギア「勉強になったー!!」未だかつてこんなに向上心を持った敵役はいただろうか。勉強熱心なトレギア。名前は鶴田幸伸プロデューサーが考案。由来は古いギリシア語で、「狂った好奇心」という意味。

     脚本の中野貴雄によると、テーマは「夢」、「巣立ち」、「ジェンダー」。内容も盛りだくさんで、稀少な女性ウルトラマンの誕生、そして全身CGウルトラマンと実写特撮の融合という実験作となった。

    cf.)『ウルトラマンR/B』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6244727.html

    cf.)『ウルトラマンジード』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6238261.html

    [参考]
    Blu-ray『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』©劇場版ウルトラマンR/B製作委員会
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     2018年に放送された『ウルトラマンR/B』(ルーブ)は「家族の絆」をテーマにホームコメディ路線を目指した異色作。

     メイン監督は武居正能。シリーズ構成は中野貴雄、約17年振りのシリーズ参加となる武上純希、そして、「第1回円谷プロダクションクリエイティブアワード 金城哲夫賞」大賞受賞の伊藤公志。脚本家チームは計12名に及ぶ。監修は前年に社長に就任した塚越隆行。

     アパレルショップを経営する湊家を中心に据え、兄弟であるカツミとイサミがダブル主人公として2人のウルトラマンに変身する。

     怪獣に対し、2人で戦う姿が卑怯に映らないよう、ウルトラマンとして半人前である素人ウルトラマンとして描かれ、特撮パートにもコメディ要素が意識的に導入された。2人が協力して戦う中でやがてヒーローとして成長していく過程が描かれている。

     また、シリーズ前半の敵である愛染マコトはウルトラマンオーブのファンとして描かれ、湊兄弟がウルトラマンとして落第点であると批判するなど、作品の中で一種のヒーロー論も展開されている。

     シリーズ後半には御剣サキという女性の仇役が登場するが、女性がシリーズを通した敵となるのはウルトラシリーズでは珍しく、これも従来のシリーズとの差別化を目指したものと思われる。

     前作『ジード』(2017)は家族に対し重い設定があり、展開上ハードにならざるを得なかったが、 本作『R/B』は底抜けに明るく、王道とは違った見応えを発揮している。コメディ路線に対し批判的な意見もあったが、現場からは路線変更しない方がいいとの声が挙がり、コミカルな作風を貫いた。


     兄弟ウルトラマンであるロッソとブルのコンセプトは「喋るウルトラマン」。そのため、アフレコ時間が歴代最長に及んだ。

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     逆に、2人が合体するウルトラマンルーブのときは、神秘性を強調してあまり喋らない設定となっている。また、劇場版では妹のアサヒがウルトラウーマングリージョとなり、後藤正行がデザインした初のウルトラ女戦士が誕生。兄妹3人が合体するグルーブへと繋がっている。


     異色作なので、観る人によって好き嫌いが分かれやすく論議を呼んだが、ウルトラマンにバリエーションを持たせることに成功し、ひとつの可能性を示した作品である。

    cf.)劇場版についてはこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6244727.html

    cf.)前作『ウルトラマンジード』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6238261.html

    cf.)次作『ウルトラマンタイガ』総論はこちら→http://ultra-7.blog.jp/archives/6253725.html

    [参考]
    Blu-ray『ウルトラマンR/B』©2018円谷プロ
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ウルトラマンR/B
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